大抵の親が卒倒する「性的逸脱」という過酷虐待 「親がおかしい」と思った子どもにできること

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周太さんはその後、高校、専門学校を卒業。就職氷河期のただ中、フリーターとして働き出しますが、まもなく仕事の腕を認められ、正社員に採用されます。生活が安定したので、ようやく実家を離れて1人暮らしを始めところ、一時期は母親が金の無心に訪れるようになりましたが、いまではもう実家と縁を切り、両親や妹とは長く会っていないそう。自分で立ち上げた仕事も順調だといいます。

弟のようにかわいがってくれる「大家さん」との出会い

「いまは『大家さん』と一緒に暮らしています。彼はもともと、僕が大好きなドキュメンタリーに出ていた人で、僕が会いに行って弟子入りしたところ、『お前は結婚する前に、他人との共同生活を経験したほうがいい、ここに住みな』と言ってくれて。この10年近く、彼が持っているビルの管理人室に、部屋を与えてもらっているんです。

彼は本業のことより、人とのコミュニケーションの取り方とか、社会の渡り方やモラルなどを教えてくれました。例えば、年上の人にはこういう態度を取るといいとか、人の悪口を言うものじゃないとか。僕が育った家は、とにかく他人の悪口ばっかりだったんだけど、親くらい年が離れた、僕が尊敬する彼がそうやって教えてくれると、『やっぱりそうなんだな』って、どんどん再発見していく。僕を育て直してくれている人です」

なお、この「大家さん」も周太さんもヘテロセクシュアル(異性愛者)で、恋愛関係ではないそう。彼も苦労をしてきた人物で、必死に生きる周太さんに、かつての自分を重ねたのでしょうか。弟のようにかわいがってくれたということです。

「『大家さん』と出会って、自分も人から大切にされるという経験をして、すごく変わってきたんですね。例えば『周太はルックスもいいんだから、こういうおしゃれをしたらもっとモテるよ』とか、『きみは頭がよさそうだから、こういうことをしたら成功するよ』とか、自分を肯定するような言葉を言ってくれる。それで、僕も少しずつ表情が明るくなっていった実感があります。15年前、実家にいた頃の自分の写真を見ると、いまの自分よりも老けてますもん」

世間には、かつての周太さんのように親から否定され続け、自信を持てずにいる人が大勢います。周太さんはそんな人たちに対し「自分の感覚を信じてほしい」と話します。

「『あんたが悪い、あんたが悪い』って親から植え付けられると、『もしかしたら自分が悪いのかな』って考えちゃうと思うんだけど、そこで感じた違和感を信じてほしいです。自分の味方は絶対どこかにいるから、その自分の味方が見つかるまで、いろんな場面に自分からどんどん出向いていってほしい。自分の感覚を理解してくれる人を探しに行く旅を、決して止めないでほしいです」

周太さんは筆者のもとに、「話を聞いてほしい」と何度も連絡をくれました。なぜそこまで、と最初は戸惑いましたが、いまは納得がいきます。そうやってたくさんのドアを、諦めずに叩き続けてきたから、たどり着くことができたのかもしれません。

当連載では、さまざまな環境で育った子どもの立場の方の話をお聞きしています(これまでの例)。詳細は個別に取材させていただきますので、こちらのフォームよりご連絡ください。
大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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