ゴルフ場に若者激増、突如吹いた追い風の正体 仲間や家族と楽しむ人が増えている

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ただし、若い層が増えているのは屋外で3密を避けやすいという要素が大きく、「ゴルフ業界が努力した結果」と胸を張っていえることではない。それをわかったうえで、前に進みたい。こうした“風”は、何もしなければすぐに止まってしまうだろう。

最近は客が戻ってきて予約が増えてきたため、スループレーをやらなくなった(できなくなった)ゴルフ場も出てきていると聞く。ゴルフ場にとってはレストラン収入も大きい。

とはいえ、スループレーがなくなったと聞けば、「なんだ、また時間がかかるのか」と思われて、需要はすぐにしぼんでしまう。

ゴルフのプレースタイルは、ゴルフ場の都合だけではなく、プレーする人たちの希望、ニーズに応えられるように、いろいろなプランを設けていかなければ、今後につながらない。

スループレーで昼食代分を割引していたゴルフ場もあった。値引き競争になるのはよくないが、選択肢を増やすことは必要だ。

初期費用の高さの解消も必要

ゴルフ用品にしても、せっかくゴルフを始めようという人たちが入口に立ってくれているのであれば、ドアを開けやすくしたい。ゴルフの壁の1つ、初期費用の高さを解消するために、中古も含めたクラブセットや購入しやすい価格の設定も必要だ。

筆者はコロナ発生後、リスク軽減と思ってプライベートでラウンドする場合、クラブを大きなバッグに入れて宅配便で送るのではなく、7~8本を入れたサンデーバッグとも呼ばれる簡易バッグで持ち運ぶようにしている。

初心者にはゴルフ規則で定められた上限の14本のクラブは、はっきり言って使いきれない。半分でも十分楽しめるので、そんなセットのバラエティーがあればよさそうだ。

簡易バッグは、若い人にとって「持ち歩きたい」と思えるデザインかどうか。ウエアのデザイン、ボールの絵柄、グリップやシャフトの色遣い、キャディーバッグのデザイン……ちょっとしたところにアイデアを出して製品化するのは、ゴルフ業界の大きな負担になるとは思えない。

ゴルフ人口が右肩下がりになって以降、追い風が吹いた記憶はほとんどない。倉本会長は「ゴルフ業界にとってコロナが追い風になっているのは間違いない。一過性でなく、継続できる施策をしていかないといけない」と、業界に呼び掛けていく考えを示す。生かさない手はない。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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