岸田氏の大宏池会構想、支持広がらぬ深刻事情 麻生派、谷垣グループと合流、頓挫する菅降ろし

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岸田氏はそこに着目。古賀氏と決別して麻生氏に再接近することで、菅・二階連合に不満を持つ細田派も巻き込んでの「反菅・二階連合」を形成すれば、「次期総裁選での菅降ろしも可能」(岸田派幹部)と踏んだとみられている。

ただ、副総理にとどまることで政権への影響力を維持する麻生氏にとって、国民の高い支持を得ている菅氏の追い落としに失敗すれば、自らの政治生命にも関わる。9月に80歳となり、「次の選挙が最後」(周辺)とみられる麻生氏にとって、「菅政権で一定の影響力が行使できれば、冒険する必要はない」(同)のが本音だろう。

「二階派ファースト」に反発

おりしも、岸田派幹部で2012年の総裁選に立候補した経験もある林芳正参院議員(元文科相)が衆院山口3区に出馬する構えを見せている。同区で当選してきた河村建夫元官房長官は二階派最高幹部であり、二階氏も激怒。岸田派パーティー前日の4日に多数の二階派幹部を引き連れて現地入りし、「売られたケンカは買う」と物騒な表現で林氏を牽制した。

ただ、二階氏は他の選挙区で現職に二階派の議員をぶつけるケースも多く、党内には「言っていることとやっていることが矛盾する。すべて二階派ファーストだ」(細田派幹部)との不満も渦巻く。このため、「次期衆院選前に大宏池会が実現すれば、林氏の出馬をめぐって麻生、二階両氏の全面戦争」(自民長老)にもなりかねない。

ただ、麻生氏の盟友の安倍氏は「祖父の代から選挙区で対立してきた林家の後継者の鞍替えは絶対認めない立場」(側近)とされ、この点でも「麻生氏が林氏を支援する可能性はない」(麻生派幹部)とみられている。岸田氏にとって、側近の林氏への対応も大宏池会実現への難題となるのは必至だ。

岸田氏は、その温和で誠実な人柄から「党内に敵がいない」とされる一方、「頼りがいのない、ただのいい人」と揶揄されてきた。その岸田氏が「初めて政治決断したのが今回の大宏池会構想」(岸田派幹部)だ。今後の展開は「岸田氏のリーダーとしての力量が問われる」(自民幹部)のは間違いなく、「腰砕けになれば、自滅の道に迷い込む可能性」(自民長老)も少なくない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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