岸田氏の大宏池会構想、支持広がらぬ深刻事情 麻生派、谷垣グループと合流、頓挫する菅降ろし

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今回の動きで他派閥幹部を驚かせたのは、「岸田氏が古賀氏を排除する動きに出た」(麻生派幹部)ことだ。2012年の衆院選不出馬を機に宏池会会長の座を岸田氏に禅譲した古賀氏だが、その後も、資金面で派閥運営を支援するなど、「宏池会のドン」(岸田派幹部)としての存在感を誇示してきた。

古賀氏は毎年開催される岸田派パーティーでも必ずあいさつに立ち、乾杯の音頭を取るのがしきたりだった。しかし、5日のパーティーには出席せず、事前に名誉会長を退任する意向を岸田氏に伝えていたとされる。

4年前にも浮上した「大宏池会」構想

古賀氏は同じ福岡県を選挙区とする麻生氏とは「犬猿の仲」として知られ、「岸田氏の将来を考えてあえて身を引いた」(古賀氏側近)とされる。もちろん、岸田派内には古賀氏に近いメンバーが一定数存在するため、「派分裂の可能性」もあるが、「派閥を抜ける議員はせいぜい2~3人」(岸田派幹部)との読みもある。だからこそ、岸田氏は「古賀氏と決別しても致命傷にはならない」(同)と判断したとみられている。

ただ、肝心の麻生派の反応は冷たい。同派幹部は「当面、菅首相を支えることで主流派の一角を占めるのが基本戦略」と語り、大宏池会構想についても「麻生派には総裁候補として河野太郎行政改革担当相がいる」と突き放す。

また、今回の総裁選で自主投票となった谷垣グループの幹部も「合流は選択肢の一つだが、麻生派と対立する議員も多く、無理に進めればこちらも分裂する」と首をかしげる。

そもそも、この大宏池会構想は4年前に浮上したが、立ち消えになった経緯がある。2017年の自民総裁選に先立つ2016年秋、麻生太郎副総理・財務相が側近を通じて密かに岸田氏に派閥の合流を持ち掛け、岸田氏も前向きに検討したとされる。両派が合流すれば、現在の最大派閥の細田派(清和会、98人)と肩を並べる巨大派閥となるからだ。

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