岸田氏の大宏池会構想、支持広がらぬ深刻事情 麻生派、谷垣グループと合流、頓挫する菅降ろし

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その際、合流後は麻生・岸田派(宏池会)として麻生氏が会長、岸田氏が総裁候補となり2頭立てで派の運営に当たるとの具体案も示されたとされる。ただ、麻生氏は「合流するためには古賀氏と手を切るのが条件」と迫り、岸田氏の周辺に「それは難しい」との声が多かったことから、合流構想は幻に終わったとみられている。

相次いで中央政界にデビューして宏池会に所属した麻生、古賀両氏は長年のライバル関係にあり、「互いに口も利かない険悪な関係」(麻生氏側近)だったことが背景にある。

2019年4月の福岡県知事選でも、麻生氏が現職の小川洋知事の追い落としを狙って自らの側近を強引に自民党推薦候補として擁立。しかし、古賀氏は二階俊博幹事長や菅義偉官房長官(当時)らと手を組み、麻生氏の擁立候補を惨敗させた経緯もある。

共通の敵は石破氏

今回の総裁選でも、最終段階で麻生氏に協力要請した岸田氏に対し、麻生氏は「古賀氏が(岸田派に)いる限り、協力できない」とはねつけたという。結果的に総裁選で惨敗した岸田氏は、「このままでは総裁選で勝てる見込みもない」と判断し、5日の派閥パーティーに先立って密かに古賀氏と会い、名誉会長退任を懇請して古賀氏も受け入れたとされる。

安倍晋三前首相は今春までは岸田氏を後継者に考えていた。麻生氏も「岸田後継」に理解を示していたが、岸田氏の後見人を自任する古賀氏の存在が大きな障害となっていた。

強固な盟友関係を維持してきた安倍、麻生両氏にとって今回の総裁選での共通の敵は、両氏と敵対し続けてきた石破茂元幹事長だった。安倍、麻生両氏の最大の目標は「石破つぶし」となり、そのためには「アピール力が弱く、国民的人気もなかった岸田氏では石破氏に負けかねない」(細田派幹部)との判断から、二階氏の後押しを受けて急浮上した菅氏に相乗りしたのが実態とされる。

ただ、安倍前政権でも麻生氏と菅氏は折り合いが悪く、政局運営などで対立することも多かった。このため、麻生氏は「とりあえず2021年秋までのショートリリーフ」と考えて菅氏を推したとされる。しかし、予想以上に高い内閣支持率と、二階氏と組んでのしたたかな菅流人事で、内閣での麻生氏の存在感が低下し、「(麻生氏の)不満がたまっている」(麻生氏側近)とされる。

次ページ古賀氏と決別して麻生氏に再接近
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