部長昇進を望まない人がジワリと増えている訳 20代金融マン「重い責任、割りに合わない」

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伝統的に日本企業では、オペレーションを担う現場の人材は質量とも豊富ですが、「超一流」と称される優良企業でも、事業を牽引できる優秀なビジネスリーダーはまったく不足しています(新入社員ほど「コロナで損する」日本企業の失態参照)。

企業側からそのビジネスリーダーの役割を期待されている候補者が、部長昇格を拒否し、ビジネスリーダーになる道を自ら閉ざしてしまうというのは、企業にとって大きな損失です。

A社は特殊な事例でしょうか。そうでもありません。いま日本企業では、昇格を拒否する従業員が増えているようです。

「さすがにずっと平社員ではカッコ悪いから、課長くらいにはなりたいです。でも、それ以上偉くなって重い責任を負わされるのは、割に合いません」(金融・20代)

「取締役は完全に雲の上で、部長が現実的な憧れの的でした。でも今は、“ただの疲れたオジサン”という感じで、まったく輝いていません。部長にならなくて、いやなれなかったんですけど(笑)、本当によかったです」(広告・50代)

こうして「偉くなりたくない」という従業員ばかりになると、リーダー不足がさらに深刻化し、長期的に企業は衰退してしまいます。

実はメリットの大きい課長職

どうして「ずっと課長のままでいたい」という生き方が支持を集めているのでしょうか。

多くの日本企業では、いったん管理職(課長)に昇格すると、降格することは非常にまれです。人事制度上は、評価が低い管理職は降格にする仕組みになっているのですが、運用では、よほど重大なミス・失態をしない限り、降格人事をしません。

ただ、それだと管理職だらけで人件費が膨れ上がってしまうので、50歳代後半で一律に管理職から外すという「役職定年」を導入しています(金融機関は50歳代前半)。

つまり、日本企業では、40歳前後で課長に昇格したら、15年以上安定した身分が保障されているのです。

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