新入社員ほど「コロナで損する」日本企業の失態 「当社の人材育成文化が死に絶えました」

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なぜ新入社員が「コロナで割を食う」のか?

4月7日に新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令されてから半年。移動や他人との接触が制限されて、企業の事業活動は大打撃を受けました。「訪問営業ができなくなった」「社内会議が減った」など色々な影響が指摘されていますが、大きく変わった割にあまり注目・問題視されていないのが「人材育成」です。

今回は、コロナ禍で企業の人材育成がどう変わり、いま何が課題になっているのか、検討してみましょう。

コロナで「人材育成は死んだ」

いまコロナが企業の人材育成を直撃しています。OJT・研修・自己啓発は「人材育成の三本柱」と言われますが、このうちOJTと研修は、この半年ですっかり様変わりしました。

第1に、OJTが機能不全に陥りました。伝統的に日本企業、とくに製造業では、先輩社員が新人・若手に対して業務の基本を手取り足取り伝授するOJTが人材育成の基本でした。ところが、リモートワークや時差出勤が一般化し、職場のメンバーと顔を合わせる機会が激減し、ひざ詰めでOJTをするというのが困難になっています。

第2に、研修がほぼ休止しました。日本企業はもともと研修が少なく、従業員1人当たりの研修費用はアメリカ企業の3分の1以下だとされています。そのわずかな時間数の研修も、リアル会合の禁止・制限や業績悪化による教育予算削減で、どんどん中止・延期に追い込まれています。オンライン化した一部の研修を除いて、研修はほぼ休止状態になりました。

第3に、オンライン化が進みました。日本では通信教育やセミナーを除いて教育のオンライン化が進んでいませんでしたが、OJT・研修をオンライン化する動きが急速に広がりました。

ただ、講師が一方的にしゃべるセミナーはともかく、実技指導を伴うOJTやグループ討論・ロールプレイといった技法を使ってインタラクティブに進める研修は、オンラインでは教育効果が限られますし、受講者が長時間集中して取り組めないという問題もあります。業種・職種にもよりますが、「オンラインはコロナが終息するまでの急場しのぎ」と捉える教育担当者が多いようです。

ある素材メーカーの教育担当者は、この半年間を振り返って「人材育成は死んだ」とさえ言います。

「当社では、各年度で必須の昇格者研修や一部のスキル教育を無理やりオンライン化し、他は基本すべて中止、あるいは来年に延期しました。オンライン化によって、これまで日本での集合研修に参加できなかった海外駐在員が参加できるようになったのはメリットですが、教育の質はかなり低下しました。職場でのOJTも、ほとんど有名無実になっています。下期以降、立て直していきますが、当社ではひとまず人材育成文化が死に絶えました」

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