新入社員ほど「コロナで損する」日本企業の失態 「当社の人材育成文化が死に絶えました」

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こうした人材育成の変化によって最も大きな影響を受けているのが、新入社員です。日本企業は、経験・スキルがない新卒者を一括採用し、企業の中で長期間かけて育成します。ところが、4月以降のコロナ対策でOJT・研修が休止し、今年の新入社員は放置状態に置かれています。

「わが社は例年、新人に入社後3週間導入研修をし、その後、職場に配属して半年間OJTをしてもらい、半年後に2日間のフォロー研修をしています。ところが今年は、入社式がオンライン。その後もオンラインで人事部から就業規則などの説明を3時間、各職場から簡単な業務の説明をしただけで、集合研修はすべて停止しました。職場に放り込んだだけで、OJTもできていません。ようやくコロナも落ち着いてきたので、来年の新人も含めて新人教育をどうするか思案しているところです」(電機メーカーの採用・教育担当者)

この問題は新人にとどまりません。日本では、「超一流」と称される優良企業を含めて、企業の将来を左右する中核人材が不足しており、人材育成が急務です。中核人材は企業によって違いますが、おしなべて不足しているのは、デジタル化・AIなど先端技術を担う専門人材と事業を牽引するビジネスリーダーです。

「海外企業との差」は広がる一方

日本企業で盛んなOJTは、現在職場で行っている基本業務を新人・未経験者にしっかり伝えるのには最適です。しかし、職場の先輩社員が最先端の高度な専門スキルや事業レベルのリーダーシップを教えることはできません。専門人材やビジネスリーダーを育成するには、研修や自己啓発を充実させる必要があります。

GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトという世界的IT企業5社)に代表される世界の優良企業は、近年、優秀な人材を獲得し、集中的に教育投資をし、専門人材やビジネスリーダーを育成することに努めています。コロナ禍で中途採用も人材育成もストップした日本企業との差は、ますます広がると懸念されます。

次ページ諸悪の根源は「危機感が薄い経営者&教育担当者」
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