イオン、「スーパーマーケット連合」創設の狙い まずはマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東が集結

拡大
縮小

連合形成のメリット

今回の統合の狙いは、マルエツ、カスミの2社にとってはイオン、丸紅のインフラの活用がある。

「単純合算の年商が5867億円と全国最大規模になり、新業態やPB開発、サプライチェーンの構築やIT投資の加速化やコストの大幅削減ができる」(マルエツ・上田社長)、「経営インフラを活用させてもらうとともに、有能な人材の相互交流や活用で経営革新を図っていく」(カスミ・小濱会長)。物流や商品調達の統合、イオンのネットスーパーや店舗開発のノウハウ吸収などが主な目的だろう。

一方、イオンの最大のメリットは、首都圏でのドミナント加速化による地域シェア拡大や電子マネーカード「ワオン」の普及拡大、さらに商品戦略の要である「トップバリュ」の販売拡大が挙げられる。

トップバリュは2014年2月期は目標年商1兆円に対し、総菜・生鮮の開発が遅れたことなどから、前期比で8.7%増ながら金額ベースでは7410億円と大幅な未達に終わった。現状ではコンビニ、ディスカウント店などグループ他業態向けの専用商品の開発を急いでおり、食品スーパーならば同規格商品の大量販売が可能で効率性が高い。

首都圏のスーパー連合形成はどれだけ拡大するか。写真左がイオンの岡田社長

各社は従前からトップバリュの取り扱いを行っているが、全体の売上高に占める比率がマルエツはわずか0.3%、カスミも3.6%に過ぎず、イオン子会社のマックスバリュ各社が15%内外に較べれば、水準が低い。経営統合を機に、ここで販売を伸ばせる余地は大きい。

再編加速の契機か

もっとも、マルエツには「マルエツ365」といった独自PBがあり、単純に品数や販売額を増やせるかどうかは未知数だ。昨年8月に子会社化したダイエーでは旧PB「おいしくたべたい!」を廃しトップバリュに統合したものの、マルエツ関係者は「(統合後も)マルエツ365は、ばっちり残る」と言い切る。

このため、今回の統合における商品戦略では、「首都圏SM業態用PB開発」を行うとし、含みを残している。岡田社長も会見では、「首都圏の消費者から見ると、現在のわれわれには足らない物はたくさんあると思う。そうしたものを中心にどんどんSM連合から商品の開発が提案されてくると思う。特段、このブランドと決めている訳ではない。1都4県で今後、求められる商品を開発・販売することが重要」と述べた。

今回の経営統合は、あくまで「第1フェーズ」とされているが、今後、SM業界の中で参加企業がどこまで拡大するのか。今回のSM連合が公表される前、4月8日の決算説明会で、いなげやの成瀬直人社長は「イオンとのシナジーはトップバリュの仕入れ、また器具・備品の購入や(設備の)メンテナンスなど後方業務の方で深めていきたい」と、連合構想にやや距離を置いたが、SM連合の首脳は「鉄道系スーパーはまったく別物。いなげやの参加はこれから」と期待を寄せる。

岡田社長は「ここ2年くらいで(各社経営首脳の)考え方がずいぶん変わってきた。緩やかな連合体では戦っていけないという共通認識ができつつある」としている。果たして、スーパー連合の立ち上げを契機に、首都圏SM業界の再編はどこまで進むか。その動向に業界の誰もが注目している。

(撮影:梅谷秀司)

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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