大学は学歴から「学習歴」が問われる時代になる 単位互換進み大学名だけでは評価できなくなる

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日本ではそれに加えて、学校間の単位互換制度が進みつつある。直近の例として、大阪府内の39大学で構成される特定非営利活動法人 大学コンソーシアム大阪が単位互換科目を設定し、オンラインなどで受講し、相互に単位認定する仕組みを整備している。こうした大学同士のコンソーシアム化が、今後大学数や互換授業数ともに拡大していくだろう。

2020年7月、文部科学省は「大学等連携推進法人」の制度を一部改変し、同一の大学法人内であれば、授業科目を相乗りして良いというルールに改めた。この緩和によって、日本全国で法人統合など大学のグループの再編が進むものとみられる。

海外の例で歴史があるのは「ボローニャ・プロセス(The Bologna Process)」だ。ヨーロッパ各国の大学の学位認定を一定の基準でそろえることで、ヨーロッパの大学のポートフォリオを強化することが目的だが、学生にとっては各国の高等教育機関の相互の単位が認められるため、学生個々人にとってベストといえる授業の選択の幅が広がる。

オンライン化で学習歴が加速

このような状況となると、従来の学歴社会でみられた「卒業大学名がわかれば、その人材がどのような教育を受けてきたのかを容易に理解できる」といったことが難しくなってくる。極端に言えば仮に難易度の低い大学に入学しても、難関大学の学生と同じ授業を履修し単位取得することも可能になるからだ。つまり、卒業大学・学部名だけでは、その人材がどのような講義を受けて単位を取得してきたのかがわからず、より精細な情報を見なければその人材の教育履歴の判断がつかなくなる。

筆者はこの状況を「学歴社会から『学習歴』社会へ」の変化であると提唱している。この変化はオンライン化が進むにつれて、さらに普及が加速するとみられる。

次に「教員の存在意義」だ。前述の単位の話では、今後は学生1人ひとりで学習の履歴がまったく異なってくると述べた。すべての学生がカスタマイズ(あるいはパーソナライズ)された学習歴を求めるとなると、教員は画一的な指導だけでは的外れな教育を施してしまう危険性さえある。

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