日本人には「先回り症候群」が多い!? 新経済サミット講演「シリコンバレーの日本人」

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日本人には「先回り症候群」が多い!?

伊佐山:芳川さんのいちばんの苦労話を教えてください。

芳川:実はあまり困ったことはありませんでした。杞憂という意味では、たくさん心配はしましたけど。私自身はシリコンバレーに駐在員として3年くらい住んでいたので、基盤もありました。心配と言えば、今後、どこで人生を送ろうかというのを家族に話すときくらいですかね。

会社を起業しようと思い始めてから、起業するまでは、精神的に思うことがありました。一般的に、駐在員は待遇がいいし、いいポジションで過ごせていただいていた中でしたから。ただ、ガイ・カワサキの有名なクオートに“The hardest thing about getting started is getting started.”がありますけど、何かを始めようとするときにいちばん大変なのは、実際に何かを始めること。

精神的には苦労しましたが、いったん始めて、会社のオペレーションが回り始めたら、心配している余裕がない(笑)。やるしかないですね。

伊佐山:それはよくわかります。続いて、外村さんにお聞きしたいのですが、シリコンバレーには同じアジアでも韓国人やインド人が多く、日本人は増えてきてはいるものの、まだ少ない。日本から来られる多くの人の相談役である外村さん、皆さん何に悩まれていますか。

外村:バリエーションはたくさんあると思いますが、自分が13年前にシリコンバレーに来た当時を思い返しても、日本人の多くは「先回り心配症候群」になってしまっていると感じます。日本でうまくやること―日本で大企業で出世するなど―は、先回りができること。僕自身も、なにかあったときに「これをやってうまくいかなければこうなるだろう」とか、「こうやってもしもこうなったらどうしよう」といろいろ考えた揚げ句、最初の一歩が踏み出しにくくなる。

私自身も今でも覚えていますが、起業時にはとても悩んだのですが、実際に起業してから半年後には「半年前にはとても悩んでいたけど、いざやってみるとマイナスは何もない」と初めてそこで実感したんです。日本人は、始める前から心配する人が多いなという気がします。

伊佐山:それはなぜでしょうか。教育の問題なのでしょうか。

外村:最近の若い人はそうではないと思うのですが、40代くらいまでの人は「答えを求めさせる教育」ばかりでした。だから、想定外のことが起きたときに試行錯誤するトレーニングもされていない。特に、大企業にいると、失敗しないほうが大事で評価されるので、トライアルエラーをしなくてもいいから、言われたことをやるというふうになってしまっているのかもしれません。日本の企業で成功すればするほど、シリコンバレーに行きにくいというメンタリティが、長い間かけてしみ込んでしまったのかなと思いますね。

(続く)(構成:山本 智之 撮影:風間仁一郎)

伊佐山 元 WiL 共同創業者CEO

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いさやま げん / Gen Isayama

1973年2月、東京都生まれ。97年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に入行し、2001年よりスタンフォード大学ビジネススクールに留学。2003年より、米大手ベンチャーキャピタルのDCM本社パートナーとして、シリコンバレーで勤務。

2013年夏より、シリコンバレー在住のまま、日本の起業家、海外ベンチャーの日本進出を支援することで、新しいイノベーションのあり方やベンチャー育成の仕組みを提供する組織を創業中。日本が起業大国になることを夢見ている。著書に『シリコンバレー流世界最先端の働き方』(KADOKAWA中経出版)がある。

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