韓国の「歴史認識」はなぜ日本とこうも違うのか 戦後最悪とされる日韓関係の背景にあるもの

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──2018〜19年には旭日旗への韓国世論の反発や韓国艦艇による自衛隊機レーダー照射、日本の輸出規制管理強化などの問題が発生して日韓対立がさらに深まりました。

慰安婦・徴用工問題とは明らかに違う、韓国発の新たなイシューが頻発しています。とくに旭日旗問題は、従来の慰安婦や徴用工といった問題とは、具体的な当事者がいない点で、性質が異なります。

問題が大きくなったのは、2018年に韓国で予定されていた国際観艦式を前に、参加を予定していた海上自衛隊に対し韓国海軍が旭日旗の使用自粛を実質的に要請したことに海自が反発、参加を取りやめたからでした。背景には、旭日旗は日本軍国主義の象徴であり「戦犯旗」だとの認識がすでに確立していたことがありました。

日本のプレゼンスは韓国で低くなった

この認識が韓国で急速に影響力を持ったのは、人々が歴史の具体的な事実に関心を失い、植民地支配=悪であり違法、とする単純な理解に頼るようになったからです。この植民地支配=悪であり違法、とする考え方は、大韓民国建国上の「建前」でもあり、韓国では誰も抵抗できない。だから例えばインターネットで、他人を批判する際にはものすごく便利だったりします。そして、これに対して大統領など政府要人らもわざわざ火消しに動こうとしない。

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かつて、日本との関係が強い時代には国内の対日反発は要人らが必ず抑えようとしました。しかしこの20年間、韓国での日本の政治的・経済的プレゼンスが低下し、相対的に重要性が低くなりました。ゆえに、無理に火消しに走ろうというインセンティブが要人らに生じない。となれば、旭日旗問題のような「建前」に関わる問題が今後も簡単に起こるようになります。

──文政権は日本に関心がないとの指摘もよく聞きます。

重要性が低いので関心も低くなる。日韓関係での「イデオロギーガバナンス」、国家としての建前に関わるナショナリズムを統制するシステムが利かなくなっています。建前を抑え、関係改善のために「火中の栗を拾う」エリート層がいなくなれば、現場での日本への対応に配慮がなくなります。レーダー照射のような緊張感のない事態が発生しやすくなるでしょう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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