「異質なペアを作れ」この先、稼げる人の共通点 「本気の知的闘争」できるプロ人材が生き残る

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遠藤「SECIモデル」が2次元から3次元になったイメージですね。

野中:そのとおりです。中身はそれでいいのだけれども、「ナレッジ・プラクティス」という言葉がどうも腹に落ちない。だったらそれを「ワイズ」に置き換えてしまおう、というわけで、「ワイズカンパニー」になったのです。

遠藤:そういう経緯があったのですね。

「エクセレント」より「ワイズ」が求められる時代

遠藤:「エクセレント・カンパニー」や「グレートカンパニー」はよく使われる言葉ですが、「ワイズカンパニー」はあまり聞いたことがない

遠藤功(えんどう いさお)シナ・コーポレーション代表取締役。早稲田大学商学部卒業、アメリカ・ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005~2016年早稲田大学ビジネススクール教授。2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。良品計画やSOMPOホールディングスの社外取締役を務める。主な著作に『現場力を鍛える』『見える化』などがある(撮影:梅谷秀司)

そこで、日本版が1983年に出たT・J・ピーターズとR・H・ウォータマンの『エクセレント・カンパニー』を読み返してみました。

そこでいう「エクセレント・カンパニー」というのは、「収益力の高い超優良企業」のことです。それに対して「ワイズカンパニー」は、社会にとって、人類にとってよいこと、つまり「善の実現」を目標にしている。そこが両者の違いです。まさに世の中で求められているのは「エクセレント」より「ワイズ」だと思います。

野中:くだんの『エクセレント・カンパニー』は綿密な定性調査に基づいた好著でした。同じような趣旨の本としては、1995年に出たジム・コリンズとジェリー・ポラスの『ビジョナリー・カンパニー』があります。

ところがその後、世界の経営学が過度に定量分析に傾き、「数値化可能なもの」しか視野に入れなくなってしまい、結局、行き着いたのが、株主第一主義のROE(株主資本利益率)経営です。

その値を高めるには、「自社株買い」や「社員の解雇」「研究開発費」を削減するのが近道というわけですから、何をかいわんやですよ。それは「経営の自殺」に等しい

遠藤:でも、短期的な株主資本主義を推し進めてきたアメリカも気がつき始めています。

昨年の夏、経済団体のビジネス・ラウンドテーブルが、「アメリカの経済界は株主だけでなく、従業員や地域社会などすべてのステークホルダーに経済的利益をもたらす責任がある」という声明を発表し、話題になりました。『ワイズカンパニー』はそうした潮流にも棹さす内容になっていると思います。

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