「異質なペアを作れ」この先、稼げる人の共通点 「本気の知的闘争」できるプロ人材が生き残る
野中:昨年夏、スコットランドのエディンバラにあるアダム・スミスの旧家で米英のビジネススクールが主催するカンファレンスがありました。テーマは「新しい啓蒙」でしたが、そこでも、株主資本主義は否定されていました。
遠藤さんの新著『コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方』も面白く拝読しました。「特別な付加価値を生み出すことができるプロフェッショナルだけが生き残っていける、コロナはその流れを加速させる」という指摘はそのとおりだと思いました。
「プロ同士」で真剣に向かい合うからよいものが生まれる
遠藤:「プロ同士」が斬り合うように真剣に向かい合うとよいものが生まれるけれど、「アマ同士」でやっても、たいしたものは生まれてこないですよね。
私の本業は「コンサルタント」です。今年の6月にローランド・ベルガー日本法人会長を退任し、無所属の独立コンサルタントになりました。
この仕事を長く続けてきて、最近よく思うのです。コンサルタントの「仕事の本質」は、「経営者に有用な知識を伝授する」ことではなく、「自分の主観を経営者の主観にうまくぶつける」ことだと。それによって初めて真に意味のあるコンサルティングができる。
野中先生のおっしゃる「暗黙知」と「形式知」の相互変換、つまり知識創造プロセスを経営者と2人で回せること。それができなければ一流のコンサルタントとは言えません。
野中:なるほど。
遠藤:先がまったく読めない「VUCA」の時代、経営者は精神的に孤立しています。そこで、「知的コンバット」ができる相手を必要としている。社内の人間では難しい。思考が同質的になっていますし、トップですから、相手は部下であり、必然的に忖度(そんたく)が働いてしまうからです。
野中:そのためには、コンサルタント自身が経営者に共感できてなければなりませんね。現象学の用語でいうと、経営者とコンサルタントの間に「相互主観性」が成立している必要があります。
遠藤:そういうことですね。「相互主観性」といえば、私はSOMPOホールディングスの社外取締役なのですが、昨年、ビッグデータの解析ソフトを持つ「パランティア」という企業と日本で合弁会社を作り、今年に入ってから「パランティア」への出資も決めました。
「パランティア」はシリコンバレーにあるユニコーン企業で、ピーター・ティールという有名な起業家が創業者です。日本の保険会社がシリコンバレーの最先端IT企業とタッグを組むなんて、今まではありえないことでした。