日本は東南アジアと親和的

国立民族学博物館名誉教授・佐々木高明氏③

ささき・こうめい 1929年、大阪府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。立命館大学助教授、奈良女子大学教授、国立民族学博物館教授、同館長を経て、同館名誉教授。財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構理事長も務めた。専攻は民俗学。

世界の人々と付き合おうというとき、一つの文化の考え方で押し通そうとしてはいけません。多様な価値観を持つ必要があります。

インドでフィールドワーク(現地調査)をしていたときのことです。インド人研究員に本の購入を頼み、買ってきてくれたので「ありがとう。お釣りは?」と聞いたら「あなたは飛行機に乗ってきたおカネ持ちです。どうして私のような貧乏な者にお釣りを要求なさるのですか?」と逆に聞かれてしまいました。

インド人は輪廻(生まれ変わり)の思想を現実に持っています。カースト(身分)制度が今も厳しく残っていて、現世で功徳を施した人は、来世に少しでも上のカーストにいけると本気で思っています。だからおカネをもらうことは決して恥ずかしいことではなく、むしろ相手に功徳を積ませてあげているぐらいに思っているのです。

アジア諸国とこれからどう付き合うか

ネパール人の「イエス」に慣れるのも大変でした。彼らはイエスと言うとき首を横に傾けます。わかっていても、実際に首を傾けられると、こちらは不安になります。約束をするときは3回ほど確認していました。

文化が違うということは物腰動作の一つから、社会制度、価値観に至るまで違うのです。多文化が接触するときは、多文化それぞれの理解が重要になってきます。

日本はこれからアジアとの付き合いが重要です。日本文化との親しみやすさという点でアジアを見ると、ミャンマーとインドの間にあるアラカン山脈の東側か西側か、で分けることができます。アラカン山脈より東側の東南アジアは日本文化に親しみやすく内地みたいに感じます。西側は外地という感じです。東南アジアの人々はマイルドで、考え方や行動様式など日本人が理解しやすい。

ところがアラカンより西側の人たちは、インド人の輪廻思想のように、価値観に大きな差異があります。アラカンより東側でも、中国の漢民族の中には、自分たちが世界の中心だという中華思想が抜きがたくあります。

インドや中国の人々と付き合うときには、こうした価値観の違いをよく知っておかねばなりません。

日本文化の起源の一つは、東南アジアの大陸部と中国の西南部を中心に広がる照葉樹林帯にあります。これらの地域とその周辺部には、お餅やみそ、漆、竹細工など日本と同じ文化が広く見られます。

「アジアの時代」と言われますが、日本人に親しみやすい文化のあるなしで分けられ、アジアは一つではないことを心に留めておくべきでしょう。

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