ジリ貧だったトランプが巨万の富を築けた理由 すべては「アプレンティス」から始まった(前)

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ところが、『アプレンティス』の高視聴率とそこから生まれた広告収入は、トランプをたちまち不慣れな立場へと追いやることになる。「IRSフォーム1040(内国歳入庁の個人所得納税申告書)」の調整後総所得を黒字申告しなければならなくなったのである。

納税記録によると、トランプは同番組で初年度に1190万ドルのもうけを出した後、2005年には4780万ドルの大金を手に入れている。稼ぎがあまりにも大きくなったため、3年間で支払った所得税の総額は7010万ドルに達した(これは後に過激な会計操作によって利息付きで還付されることになるが、こうした手法は現在監査の対象になっている)。

リアリティー番組という宣伝マシン

思いがけず転がり込んだ巨万の富。その額は徐々に減少していったものの、大統領になるまでトランプの懐を潤し続けた。背景には、番組のスターとしてトランプが利益の半分を受け取るという異例の契約があった。

ここにはプロダクトプレイスメント(番組内で企業名や商品を登場させる広告)から発生する収入も含まれおり、同案件の数は1カ月に100を超えることもあった。ペプシのような有名企業が何百万ドルも支払い、バーネットとトランプがこれを山分けした。

もちろん、2002年に番組制作のアイデアが浮上した時点では、成功が約束されていたわけではない。とはいえ、トランプ自身が当時『アプレンティス』を放映する全米ネットワークNBCの幹部に語ったように、番組に出演すれば、少なくともトランプが持つほかのビジネスの宣伝にはなる。「仮に視聴率がとれなかったとしても、私のブランドにとっては素晴らしいものとなるだろう」。

恩恵はすぐにもたらされた。2004年7月には早くも番組を利用したトランプのマーケティング企画が具体化している。2006年には、最後まで勝ち残った出場者が番組内で手がけるプロジェクトとして、トランプがニューヨークに持つ「ザ・トランプ・ソーホー・ホテル」が取りあげられた。

製品の宣伝、講演依頼もかつてない勢いで舞い込むようになった。

『アプレンティス』の放送が始まる2年前、トランプの副収入は「ビッグンテイスティ」バーガーの広告出演料と本のわずかな印税に限られ、ほぼ50万ドルで頭打ちとなっていた。しかし納税記録によると、その後の2年間で、トランプは11の広告キャンペーンとさまざまな講演会から520万ドルを手に入れた。リアリティー番組の実業家としての高まる人気。それがすべての追い風となったのだ。

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