ジリ貧だったトランプが巨万の富を築けた理由 すべては「アプレンティス」から始まった(前)
申告内容によると、トランプは16年間にわたり『アプレンティス』から1億9700万ドル(約208億円)もの大金を直接受け取っている。これは大統領の主張とほぼ一致するが、同番組で得た名声との関連で、さらに2億3000万ドル(約243億円)もの収入を手にしていた。
番組の高視聴率を背景に、誰もが「トランプ」のブランドを使いたがった。トランプはこのビジネスチャンスに飛びついた。クッキーの「オレオ ダブルスタッフ」の宣伝に50万ドル、ドミノ・ピザの販売促進にもう50万ドル、そして洗剤を売り込むのに85万ドルといった具合である。
ホテル開発企業とは100万ドルを超えるライセンス契約を結んだ。契約先には旧ソ連や発展途上国などの素性の怪しい企業も含まれていた。テレビによって創り上げられた偽りのイメージを利用したビジネスもあった。トランプはテレビカメラの回っていないところで「ドナルド・トランプ流 金持ちへの道」といったセミナーを催し、うさんくさい一攫千金の秘訣を説いていた。セミナーの触れ込みは、「ドナルド・トランプを億万長者にした秘密と戦略を伝授する」――。
これより何年も前に、トランプは父からひそかに受け取った資金で、アトランティックシティのカジノなど経営の行き詰まったさまざまな事業を整理している。『アプレンティス』がもたらした新たな現金収入を元手にトランプがゴルフリゾートなどを次々と手に入れていったのも、これと似ている。だが、ゴルフリゾートは簡単に利益を生み出せる事業ではない。事実、納税記録によればトランプのゴルフリゾートは長年にわたり巨額の損失を垂れ流し続けている。
ホワイトハウスのジャッド・ディア報道官にコメントを求めると、同氏は事実関係について具体的な反論を行うことなく、本記事を「フェイクニュース」と呼んで攻撃した。「大統領候補によるテレビ討論会直前」というタイミングを狙って「政治的な動機に基づく、不正確な中傷記事がまたしても」掲載されることになった、というわけだ。
トランプの富の秘密を解明しようとする試みはこれまでにも何度となく行われてきたが、真相は部分的にしか明らかになっていない。不透明なビジネス構造、トランプの大言壮語とウソ、バラ色の物語に疑念を差し挟む者に対する脅迫と訴訟が巨大な障壁となっているためだ。トランプは秘密を守るのに手段を選ばない。納税記録を開示するという40年にわたる大統領の慣習に背き続けているのが、その最たる例だ。
本記事はその納税記録を検証したものである。分析対象は個人と法人の税務申告データ20年分以上に及び、トランプの富の全容が初めて明らかとなった。例えば、投資詐欺で非難されているマルチ商法会社ACNから876万8330ドルの入金があった。