ジリ貧だったトランプが巨万の富を築けた理由 すべては「アプレンティス」から始まった(前)

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リアリティー番組のプロデュース話が進んでいたケーブルテレビ局のライフタイムからは5万ドルが支払われたが、番組が実現することはなかった。短命に終わった住宅ローン事業からは5026ドルの純利益、一連のマットレス商品への名義貸しで1528万6224ドルを得ている。

記事作成にあたっては、各種インタビューや、これまで報道されてこなかった未公表資料も活用した。この中には、有力なライセンス企業ベイロック・グループの内部文書も含まれている。同社とのロシアとのつながりが、後に大統領となったトランプをロシア疑惑で苦しめることになる。

これらの情報を組み合わせることで、トランプのその後のキャリアを決定づける時期に何が行われていたかが、これまで以上にはっきりした。トランプはこの時期に築いたカリスマ的人気をバネに大統領の座に駆け上がり、事実をねじ曲げる劇場型政治を展開するようになる。

破産男からテレビスターに

数々のトラブルにさいなまれていたトランプに千載一遇のチャンスが転がり込んできたのは、21世紀が始まった頃だ。

2度目の離婚とアトランティックシティのカジノでの失敗を経て、トランプの金銭問題は一段と深刻化、破産の影が刻々と忍び寄っていた。所得税申告書を見ると、1990年代は毎年純損失を計上している。一部損失は翌年以降に繰り越され、繰越損失は2002年末時点で3億5280万ドルにまで膨らんでいた。

だが、この事実はほとんど知られていない。トランプが執拗に自己プロモーションに励み、それがうまくいったからだ。冗談半分で大統領候補に名乗りを上げた2000年の選挙活動は4カ月しか続かなかったが、おかげでジェイ・レノが司会する国民的トーク番組への出演がかなった。マクドナルドが新発売した1ドルの「ビッグンテイスティ」バーガーのテレビCMにも出演し、ゴーストライターの手によるものではあるが、本も1冊出版した。

とはいえ、こうした名声も時間がたてば徐々に色あせていく。もっと大きな波をゲットするには、何かを変える必要があった。運命の歯車がカチリとかみあったのは、そのときだ。トランプは意外な筋から持ちかけられたオファーによって、巨大な推進力を得ることになる。これにより、アメリカの未来はともかく、彼の未来は大方決定づけられた。

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