ジリ貧だったトランプが巨万の富を築けた理由

すべては「アプレンティス」から始まった(前)

トランプ大統領はいかにして巨万の富を築いたのか(写真:Doug Mills/The New York Times)

ストレッチリムジンの後部座席。自身の新番組『アプレンティス(見習い)』の出場者第1号との対面を前にして、ドナルド・トランプは自慢げにこう話していた。私は経済苦を乗り越えた億万長者だ――。

「私が使ったのは自分の脳みそと交渉スキル。それで大成功した」とトランプは視聴者に語りかけた。「現在、私の会社は史上最大の規模に成長し、史上最強の状態にある」。

全部ウソだった。

知名度を現金に変える錬金術

冒頭のエピソードは2004年1月の番組開始時のもの。だが、その数カ月後にトランプは税務申告を行い、前年に中核事業で8990万ドルの純損失があったと報告している。トランプはアメリカのテレビ視聴者から、触れるものすべてを黄金に変える能力を持った偉大な辣腕ビジネスマンと見られていたが、実際にはあらゆるところで赤字をこさえていた。

その12年後、「自力ではい上がってきた、たたき上げの大物ビジネスマン」という国民の意識に刷り込まれたイメージは、大統領選挙でトランプにまさかの勝利をもたらすことになる。

リアリティー番組『アプレンティス』の内容はよく知られている。だが、納税申告書からは、これまで正しく語られることのなかったトランプの実像が鮮明に浮かび上がってくる。リアリティー番組によって創り上げられた架空のイメージと、それに基づく人気。これこそがトランプの富の源泉であり、繰り返される破産のサイクルから彼を救い出す命綱となってきた。

トランプは会社経営の天才ではなかった。自らを有名にし、その名声を現金に変えること。トランプの才能が遺憾なく発揮されたのは、この点だ。

では、トランプはセレブリティ(有名人)の立場を利用して、どれだけの収入を得てきたのだろうか。ニューヨーク・タイムズは納税記録を分析し、金額を特定することに成功した。

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