「フェイク」と「ポピュリズム」は民主主義の本質

「事実らしく見える価値」を人々は求めている

テレビ討論会で、民主党候補のバイデン前副大統領(右)を指差しながら発言する共和党候補のトランプ大統領(左)(写真:ロイター)
1カ月後に迫ったアメリカ大統領選挙。この4年間、世界はトランプの登場に始まり、トランプの言動によって動かされてきた。メディアを「フェイク」と言い募ってきたトランプこそ、「ポピュリズム」の権化、民主主義の敵なのか。西洋近代が生んだ民主主義という「価値」は本当に疑う余地のない真理なのか。トランプ個人の背後に潜む根源的問題を、このたび上梓された『近代の虚妄:現代文明論序説』の著者、佐伯啓思氏が現代に問いなおす。

トランプがあらわにした民主主義の本質

アメリカの大統領選挙が目前に迫ってきている。トランプ大統領が再選されるかどうかはわからない。しかし、仮にトランプがこの政治舞台から消えたとしても、アメリカ合衆国がトランプを大統領に選出したという事実は、決定的な重要性を持って残る。

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それはトランプ個人についての評価やこの政権の成果云々ではなく、「トランプ現象」というべきものである。その意味を理解することは、現代文明を理解するうえで決して避けては通れないからだ。それをまずは「フェイク」という一言で特徴づけてみたい。

今日の社会が多分に「フェイク」で作られているという、誰もがどことなく感じつつも表面には持ち出さずにやり過ごそうとしてきた事実をトランプはあっけなく現前化してしまった。

トランプが「真実」を、あるいは「事実」を述べていないことは、実際には誰の目にも明らかなことで、最初からトランプには、厳密な意味での「真実」や「事実」は期待されていなかった。

トランプ支持者にとっては、彼がフェイクを述べたてても特段の問題ではないのであって、トランプが、自らの都合に合わせたイメージ操作を行い、自身の支持者たちの拍手喝采をもくろんでいることは、最初から織り込み済みになっているのである。

これだけですでに「フェイク」なるものを論じる場合の困難さが十分に暗示されているだろう。念のためにいっておけばフェイク(捏造)にも実際にはさまざまなレベルがあって、まずきわめて単純な「ウソ」や「虚偽」や「まやかし」のレベルがある。

トランプは自身の大統領就任集会に過去最大の人々が集まったというが、それが虚偽かどうかは、実際に調べればわかる。ある過去の発言がウソかどうかは新聞記事などの検証でわかる。こうした文字どおりの単純な「事実」によって検証できる虚偽やまやかしはいくらでもあるが、それはわざわざフェイクというまでもない。

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