メタボが健康寿命を縮めないという新説の真相 長生きするほど「フレイル」が危なくなる

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フレイル度を測定するために私たちが使用しているのが、次の15の質問です。

「はい/いいえ」で答えて合計得点を数えてみてください。

【身体機能】
①この1年間で「転んだこと」がある 「はい」で1点
②「1キロくらいの距離」を不自由なく歩き続けられる 「いいえ」で1点
③「目」は普通に見える(メガネ等を使ってもOK) 「いいえ」で1点
④「家の中」でよくつまづいたり、滑ったりする 「はい」で1点
⑤転ぶのが怖くて「外出」を控えることがある 「はい」で1点
⑥この1年間で「入院」したことがある 「はい」で1点
【栄養】
⑦最近、「食欲」はある 「いいえ」で1点
⑧大抵のものは「噛んで」食べられる 「いいえ」で1点
⑨この半年間で「3キロ」以上、体重が減った 「はい」で1点
⑩この半年間で、前より「筋肉」や「脂肪」が落ちたと思う 「はい」で1点
【社会参加】
⑪一日中、「家の中」で過ごすことが多い 「はい」で1点
⑫2、3日に1回は「外出」する(ゴミ出し程度は含まない) 「いいえ」で1点
⑬家の中、または外で、趣味・楽しみ・好きでやっていることがある 「いいえ」で1点
⑭親しく話せる近所の人がいる 「いいえ」で1点
⑮親しく行き来する友人、別居家族、親戚がいる 「いいえ」で1点

目安として、65歳を超えて4点以上であればフレイル要注意といえます。
しかし調査をすると、高齢者以外も同じくらいの割合でフレイルが疑われる実態が判明しました。

現代人ほどフレイルリスクが高い

横浜市の55〜64歳・約2600名を対象に先の質問に答えてもらったところ、4点以上のフレイルが疑われる人の割合は、男性で約20%、女性で13%。ところが同地域の65歳以上でもフレイルが疑われる人は男性で約23%、女性で約18%だったことから、壮年後期でも高齢期と比べてそれほど大差がないことが明らかになったのです。

理由を探ると、男女ともにある共通項がありました。

『100年時代の健康法』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

それは、先の質問の【社会参加】項目(とくに⑬、⑭、⑮)に「いいえ」と答えた人が、高齢者よりも多かったのです。

近隣との付き合いが減少し、「社会の希薄化」が問題になっていますが、その実情がこうしてフレイルリスクに反映されていることが伺い知れます。そして、この傾向は、高齢者よりも現役世代に強く働いており、将来、社会不参加によってフレイルになる人が増える可能性を示唆しています。

平均寿命が延び続けるこれからの時代、私たちは、かつてないほど長い老後を過ごすことになるでしょう。

医療技術はますます発達して100歳を超えて生きる人は増えると見込まれています。しかしそれは、「不健康寿命」だけが延びることを意味するかもしれないのです。

北村 明彦 東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム 研究部長

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きたむら あきひこ / Akiniko Kitamura

医学博士。1989年筑波大学大学院医学研究科を修了後、大阪府立成人病センター、大阪府立健康科学センター、大阪がん循環器病予防センター、大阪大学で診療・研究・教育に従事。2016年1月より現職(2020年度現在)。生活習慣病予防と介護予防という壮年期・高齢期の両健康を専門分野としており、脳卒中・心臓病・高血圧・脂質異常・糖尿病の予防に加え、フレイル・ロコモティブシンドローム・認知症の予防を研究テーマとしている。2017年に「高齢者の健康余命にフレイルが大きく関与、メタボリックシンドロームの影響は認められず」という研究成果を発表し、公衆衛生学の新たな知見を導いた。

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