中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か、それとも縮小するのか

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1978年に鄧小平の改革開放が始まる。1978年から2008年までの実質経済成長率は年平均9.8%と驚異的であった。貿易も、1979年から2001年まで輸出が年平均16%増加、2002年から2008年まで年平均27%増加し、世界最大の輸出国となった。

人口爆発への対応として1970年代に採用した「一人っ子政策」の結果、人口に占める生産年齢人口の比率が増えて、いわゆる「人口ボーナス」が発生。沿海部の工場には、農村から余剰労働力が供給され、労働コストをさほど上げずに生産と輸出が拡大した。貯蓄率も上昇し、1980年代は30%超、1990年代は40%超、2010年前後には50%超という驚異的な貯蓄率を達成、これが旺盛な投資を支えるとともに、巨額の経常黒字の要因となった。

中国経済の課題

このように、1978年以降の中国は大きく経済発展を遂げたが、その前提条件は崩れつつある。「人口ボーナス」期は終息を迎え、労働コストは上昇、貯蓄率も減少した。米中貿易摩擦が示すように、過度に輸出に依存した経済成長を続けることも国際環境から困難となった。

中国の1人当たりGDPはまだ1万ドル。アメリカの6万ドル、日本の4万ドルとの差は大きい。高齢化が急速に進行する中で「豊かになる前に老いる」リスクに直面している。人口増加が見込めない中では生産性を高めるしかないが、生産性(全要素生産性、TFP)上昇率は1996年から2004年の6.1%から、2005年から2015年は2.5%に減少したとの推計もある。

全要素生産性の上昇のためには、技術革新に加えて、資源配分の効率改善が重要である。具体的には、将来性があり伸びる企業やセクターに資金を配分する必要があるが、自由化が遅れる中国の金融セクターは、資金配分や金利決定に経済原理以外の要素が入り込む。国有企業が、民間企業よりも生産性が低いにもかかわらず優先的な資金配分を受けているとも指摘される。

北京もこうした課題は認識している。輸出と投資に依存した経済成長の限界を意識し、前述のとおり2000年代から内需の拡大はうたわれてきた。そうした流れの中で、「双循環戦略」が掲げるものも、内需重視を今後さらに強化する、しかし外部との経済交流を断つわけではなく、市場開放を進め外資の中国投資も歓迎するという立場であろう。

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