海底ケーブルは地球の動脈
19世紀終盤から20世紀初頭、大英帝国の電信のための海底ケーブルは地政学的に中心となる政策だった。西へ向かう大西洋のケーブル、英仏ケーブル、そして、アフリカからハワイ島など太平洋までつなぐ壮大な南回りケーブル。21世紀となり、海底ケーブルは光通信に変わり、その使命としてはインターネットのデジタルデータの流通が主となった。
インターネットの動作原理はある1つの経路が閉ざされれば自動的に別の経路を使うことである。2地点を結ぶ海底ケーブルを国が所有してそれを守るというモデルの優位性は失われた。社会や人にとっての価値のためにどのような海底ケーブルが敷設されるべきかという、官民が連携する地経学的な対象へと完全に変化した。
グローバル社会全体にとってインターネットが健全に機能し続けることが重要で、そのために何をするのか、が政策課題となる。グローバル社会の健康を担うインターネットは地球を覆う血管網であり、海底ケーブルはその動脈である。
ロシアのタス通信は2020年7月17日、フィンランドのCinia社とロシアMegaFon社の合弁会社が計画するフィンランドから日本へ向けた13.8万kmの海底ケーブルプロジェクトであるArctic Connectのために、8月5日に詳細な調査を目的とする調査船が出航することを報道した。フィンランドから氷の融解した北極海を通り、日本を目指すルートである。
それに先駆けた2020年7月6日、アメリカRTI社は、同社のJGA(Japan-Guam-Australia)ケーブルの開通を発表した。日本をグアムとつなぎ、グアムを西太平洋の新しいハブとするためのケーブルだ。現在は西太平洋のケーブル集積海域は南シナ海である。グアムはこれに加えたまったく新しい拠点となる。
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