インターネット「海底の動脈」の知られざる全容 世界の枢要であり安全保障上のリスクをはらむ

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計算してみると、通信遅延に関してもさまざまな優位性がある。とくに、北極海からの出口ベーリング海の南側で分岐をして、シアトルと北海道を結ぶと、北海道はニューヨークに最も近い日本となる。ニューヨークとの距離の近さは金融業界にとっては価値が高い。

2019年の暮れ、北欧の研究教育ネットワークのグループであるNORDUnetの友人から、冒頭のCinia社のケーブルを用いて、フィンランドと日本を結ぶ計画への協力を要請された。フィンランドからベーリング海を通り、アメリカ、東京、苫小牧に分岐し、津軽海峡を通って、ウラジオストクに上陸する計画である。Brexitの影響で大西洋のほとんどのケーブルが上陸していたイギリスに加えて、マルセイユなどのEU国への新設ケーブルの計画が増えているという。この動きとも連動していると思う。

大陸横断ケーブルはリスク含みの動脈

海底ケーブルは比較的安全で自由な動脈である。一方、大陸横断ケーブルは当該国の政策に影響されやすいので、つねに安全保障上の懸念があるリスク含みの動脈となる。現在米国大陸横断か、ロシア大陸横断ケーブルに依存している、EUと日本やアジアの通信にとってもまったく新しい北の動脈となる。

3. 海底ケーブルとサイバーセキュリティー

海底ケーブルは、光ファイバーとそれを守るための防護表皮、そして、減衰した信号を増強するアンプに送電する電力ケーブルから成っている(サメがかじって切断という可能性は今の防護表皮ではない)。現在では光ファイバーでの通信なので、昔の電気信号のようにファイバーから直接の盗聴はできない。その意味では、「潜水艦が盗聴をする」というセキュリティー上のリスクは現在では存在しない。

逆に、海底ケーブルの信号や電力の変化やゆらぎが、外的な要因に起因するので、これを詳細に測定すると、海底のセンサーとなり、魚類や潜水艦などの検知に利用されることはある。また、センサーとしての海底ケーブルは海底の変化、とくに、地震や海底火山の測定には積極的に利用されている。こうした海底ケーブルの最大のリスクは、ケーブルの切断である。

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