古典界の「薄幸クイーン」何とも悲しい結婚生活

源氏物語・葵上になぜか心引かれる理由

(写真:Zak/PIXTA)

いわゆる「結婚の条件」というのは、どの時代や国でもホットな話題になりやすい。

イタリア語には「心さえつながっていれば、あばら家でも大丈夫さ」ということわざがある。さすがロマンスの国が生み出した言葉だなと感心するものの、アモーレだけじゃ生活が立ちゆかないというのも確かだ。

一方で、時間とともに価値観が変化しつつあれど、日本では現実を見据えた考え方の方がしっかりと根付いており、結婚を通して生活の基盤を固めようとする人も少なくないようだ。ただし、大恋愛が突然やってきたら、国籍を問わず、たいていの人は条件なんぞ頭から吹っ飛び、パッションに溺れてしまうので、それはあくまでも正気の時の話である。

16歳で源氏君に嫁いだ薄幸クイーン

ところが、たとえ条件が揃っている相手を手にしたとしても、幸せになるとはかぎらない。周りを見渡すといくらでも残念な例を見つけ出せるが、素晴らしい旦那を持ちながらも「薄幸ランキング」ナンバーワンに輝くのは、間違いなく『源氏物語』に登場する葵上という女性なのではないだろうか。

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周知の通り、葵上は源氏君の最初の正妻。源氏君が元服式を経た直後に与えられた妻であり、父は桐壺帝時代の左大臣、母は桐壺帝の妹の大宮。結婚当初、源氏君はおおよそ12歳、彼女は4つ年上の16歳という設定になっている。なんとも言えない年の差だ。

葵上は見た目が綺麗で、教育もバッチリだし、家柄も申し分ない。しかし、引く手数多の状態だっただろうに、恋愛のスリルを知ることなく、ほんの子どもにしかか見えない旦那を押しつけられてしまうのだ。何もかもが完璧な源氏君だったらいいじゃないかと思うかもしれないが、その相手はあまりにもスゴすぎて自分が出る幕はほぼゼロ。

作者の紫式部は源氏君に対する絶賛の言葉を惜しまない。彼はとにかくハンサムだ。

「雨夜の品定め」という有名な場面があり、それは物忌みのために宿直していた源氏君のもとに何人かの殿方が募り、女の善しあしについて論じられる内容になっている。それぞれの人物が自らの武勇伝を暴露する中、主人公の腹違いの兄に当たる朱雀帝がそこで、「もし源氏君が女だったらぜひ抱いてみたいな……」という問題発言をつぶやく。つまり、彼は女性陣に限らず、男性から見てもカッコイイわけである。

源氏君は書く和歌が洗練されており、使っている紙や小道具まで洒落ている。踊ったり、楽器を奏でたりすると、そこに居合わせた人たちが涙を流す。まるでジャニーズアイドルの追っかけがコンサートを観て、感動を抑えきれないかのように。

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