AppleWatchの進化に見た「家族囲い込み」の要諦 オンライン需要に引っ張りだこのiPadも刷新

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Apple Watchを生かしたフィットネスサービスも追加され、Appleには、音楽、映画・ドラマ、雑誌・ニュース、ゲームといったコンテンツ、さらにiCloud追加容量、クレジットカード、製品保証と、非常に数多くのサービスがラインナップされた。数が増えすぎて、シンプルさが失われてきたところで登場させるのが「Apple One」だ。

Apple OneはiCloud追加容量、Apple Music、Apple TV+、Apple Arcadeを基本にしており、日本向けには「個人」プランがストレージ50GBで月額1100円、「ファミリー」プランがストレージ200GBで月額1850円(最大6人で利用)が用意される。いずれのプランも、すべて別々に登録するより1200円ほど安くなる。

アメリカ向けには、前述のサービスにApple News+、今回のイベントで発表されたApple Fitness+を加え、ストレージを2TB利用できる「Premier」プランが月額29.95ドルで用意される。

例えば筆者の場合、ファミリープランを選択したいが、ストレージは200GBでは足りない。そうした場合は、2TBの追加ストレージを上乗せすることができるという。こうして、アップルのサブスクリプションサービスを束ねて割引し、より多くの人達がアクセス可能な状態を作ろうとしている。

Apple Watchの施策同様、ファミリー共有設定にあるように「家族」単位での囲い込み戦略の一環、と見ていいだろう。

iPadラインナップ刷新はダメ押しになるか?

最後に、iPadの2機種について触れておく。今回のイベントでアップルは、10.2インチiPad(第8世代)と、10.9インチiPad Air(第4世代)を発表した。iPadは直近の2020年第3四半期決算でも前年同期比31%増と、オンライン授業などの需要に引っ張りだこの状態だった。

最新A14 Bionicチップを搭載したiPad Air。新たな5色展開も鮮やかだ(写真:アップル基調講演ビデオより)

新しいiPadにはA12 Bionicチップを採用し、エントリーモデルのiPadとして初めて、機械学習処理を高速化するニューラルエンジンが搭載された。今後、拡張現実、画像・映像処理といった処理性能が求められるアプリが教育市場で活用されると、iPadの処理性能の優位性が際立ってくるだろう。特に、アメリカ市場で人気があるChromebookに対して、6倍の性能を発揮する、とアピールしていた点も、競合を強く意識している現れだ。

さらに、新しいデザインが与えられたiPad Airは、現行モデルのiPad Pro 11インチと同様の筐体に、10.9インチの縁なしディスプレーを搭載。またホームボタンが廃止された代わりに、トップボタンに小型の指紋センサーを内蔵した。加えて、業界で初めて5nmプロセスを採用するA14 Bionicチップを、2020年モデルのiPhoneに先駆けて搭載したこともニュースだ。

各製品については、実機にてレビューをお届けしたい。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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