セールスフォースが驚くほど信頼を重視する訳 「自分たちさえよければよい」という発想はない

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「自分の会社における最高のバリューはなにか?」と確認してみると、さも当たり前だと言わんばかりの口調で「イノベーションです」という答えが返ってきたのだという。

そして、なぜ「信頼」という答えではないのかと聞いてみた結果、「私は最高のアイデアが勝つと信じていますし、それがシリコンバレーの成功のカギですから」との返答。

いかにもスタートアップの経営者が口にしそうなことではあるし、かつてはそうだったのだろうということはベニオフも認めている。だがそこには、「けれども、今後もそうだとは限らない」という言葉が続く。

イノベーションはもちろん重要だが

もちろんイノベーションは重要だ。しかし、信頼よりもイノベーションに重きを置き始めると、本当に熱湯に身をさらすことになってしまうからである。ぬくぬくと湯に浸かっているカエルは、沸騰しても反応することができないということだ。

バリューをお金に換算する方法はない。確かにバリュー、特に信頼を優先させれば、利益が犠牲になる場合がある。しかし、短期的にはそうだとしても、四半期に稼ぎ出す収益が、時間とともに失ったかもしれない信頼よりも値打ちがあることは絶対にない。(87ページより)

成功しているCEO、とくに創業者に、「自社を真に優れた企業にした主要なマイルストーンは何か」と聞いた場合、画期的な製品やアイデアを中心とした話に落ち着くことは多いだろう。

すべてのイノベーションや新製品には“前後”があり、販売数や顧客維持率、収益などの違いを定量化できるのだから当然の話だ。ベニオフ自身も、セールスフォースの製品や利益について何度も自慢してきたと振り返っている。

しかし、私は心から信じている。セールスフォースの成功の真のストーリーを最もよく表すのは、頑固さやエゴよりも信頼が勝った瞬間だ。恥を恐れたり、たとえ売上高が数百万ドルも失われたりしても、それ以上に、透明性が勝利した瞬間であることを信じている。(88ページより)

1つひとつの企業がつくり上げた製品は、どっしりとしたオークの木のようなものだとベニオフは言う。それは、苗木に育ってほしいと願って地中に埋める、何百もの小さなドングリに似ているとも。

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