産業医が見た生理前の不調が職場に及ぼす影響 月経が軽い女性上司が同性部下に厳しいことも

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月経による心身の不調に苦しむ女性は少なくないが、その周囲の人たちは彼女たちにどのような対応をしているのだろうか?(写真:maroke/PIXTA)

バイエル薬品が制作し、婦人科などで配布している冊子(『生理前カラダの調子やココロの状態が揺らぐ方へ PMS 月経前症候群』)によると、約74%の女性が、月経前や月経中に身体や心の不調(月経随伴症状)を抱えているという。

月経随伴症状とは、月経前はPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)、月経中は月経困難症と呼ばれる症状だが、日本ではまだあまり知られていない印象だ。

しかし、月経周期により精神状態や体調が変化することに気づき、悩んでいる女性は少なくない。

一方で近年、共働きが当たり前になり、生涯にわたって働き続ける女性は増えている。働く女性たち、そしてその周囲の男性たちは、女性の約7割が抱える月経前や月経中の身体や心の不調に、どのように対処しているのだろうか? 産業医と心療内科クリニック院長を務める内田さやか先生に、PMS・PMDDに関する企業内の現状を聞いた。

相談事例1:なぜか突発的に休んだり仕事効率が落ちる

IT系企業に務めるAさん(男性、50代)は、部下のZさん(女性、30代)のことで悩んでいた。

Zさんは、普段は仕事が早く、納期を確実に守り、ミスを出すこともない優秀な部下だ。しかし、毎月必ず1〜2日は突発的に休むことがあるほか、その前後の仕事のスピードが普段より格段に落ち、ケアレスミスが発生することもある。

そんな状況が半年近く続き、見かねたAさんは、産業医である内田先生に相談した。

「毎月休む程度であれば、わざわざ産業医に相談することは少ないと思いますが、それに加えて『休み方が突発的』『仕事のパフォーマンスが落ちている』など、ダブル、トリプルの問題が重なると、『先生から話を聞いてみてもらえませんか』と男性上司から女性部下のことを相談されるケースはあります。

部下の健康そのものを心配するというよりも、仕事への影響が大きく、背景にどうやら健康があるようだ……という場合に、産業医に相談しようとなる場合が多いですね」

内田先生がZさんに会って話を聞くと、数年前から月経前になると精神的にも身体的にも不調になるため、一度婦人科を受診してピルを処方してもらったことがあるが、副作用が強くて自己判断でやめてしまっていた。

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