産業医が見た生理前の不調が職場に及ぼす影響 月経が軽い女性上司が同性部下に厳しいことも

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そこで内田先生は、「そういうときは、もう一度受診して、先生に症状や副作用を相談すれば、薬を調整してもらえますよ」とアドバイスした。

「私が月経に関する相談を受けるのは、20〜30代の女性が中心です。職種での差は感じませんが、PMSやPMDDはストレスをため込みやすい人や、不規則な生活している人が重くなる傾向があるので、忙しい職場の女性からの過重労働やストレスの相談の中で、実は……みたいな感じで月経の話が出るケースも多いです。

話を聞くと、さまざまな悩みをたくさん抱えていて、『あれがつらい、これがつらい』といろいろ相談なさる方もいらっしゃいますが、その割に『何か対策してますか?』と訊ねると、『とくに何もしていません』という人が少なくないのが現状です」

しっかりと自分で症状を調べ、病院を受診し、薬を処方された経験のある人はむしろ少数派。実際は、多くの悩みを抱えているにも関わらず、セルフケアも、病院の受診もしていない女性に多々出会うという。

「何も対策をしていない理由は、不調を我慢していたり、そこまで深刻に捉えていなかったり、薬に頼りたくないと思っていたり、薬で改善できることを知らなかったり、いろいろです。そもそも、正しい知識がないことが一因ではないでしょうか。今は効果的な治療法や薬があるので、利用しないともったいないと思います。産業医は、そういう人が病院へかかるために、背中を押すような役割も担っています」

Zさんは再び婦人科へ通い始め、内田先生は本人の同意を得て、上司のAさんに、「Zさんに婦人科の受診を勧めました。引き続き、勤怠やパフォーマンスの経過を見てください」と報告した。

相談事例2:情緒不安定で対応に困る

電気機器メーカーに務めるBさん(男性、40代)は、部下のYさん(女性、20代)のことで悩んでいた。

Yさんは、周囲に伝わるほどイライラしているかと思ったら、先輩社員から軽く注意を受けただけで、突然涙を流し始めることがある。そのため、ほかの社員から「社内の空気が悪くなる」「情緒不安定で対応に困る」という声が増えてきている。

内田先生はBさんから、「もしも健康上の問題が関係しているなら、先生からアドバイスしてやってもらえませんか?」という相談を受けた。

「男性上司から『女性部下の相談に乗ってほしい』という依頼を受けるケースでは、月経が関係している場合もあれば、関係していない場合もあります。関係していない場合は、精神科の病名が思い当たるケースもあれば、プライベートなことで悩んでいたり、職場に不満を持っているというケースもあります」

Yさんに会って話を聞いてみたところ、内田先生は、Yさんのメンタルの不調に周期性があることに気がついた。

「Yさん自身は『もしかしたら自分はうつ病なのかもしれない。でも精神科へ行くのはちょっと……』と不安そうにしていましたが、『もしかするとうつ病ではなく、PMSかもしれません。婦人科なら精神科より受診しやすいのでは?』と提案しました。するとYさんは『婦人科なら、相談してみたい』と言い、表情も明るくなりました」

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