産業医が見た生理前の不調が職場に及ぼす影響 月経が軽い女性上司が同性部下に厳しいことも

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産業医は診断を下すことや、薬を処方することはできない。相談者の相談内容に健康問題が潜んでいる可能性があれば、適切な診療科を検討し、病院への受診を促す。

まれに、婦人科によっては、PMS・PMDDのメンタル不調を診ない医師もいるため、一度の受診でうまくいかないケースもある。相談者がどこの病院へ行けばいいかわからないという場合は、受診先を探す手助けをする。

また、不調の背景に、業務起因がないか確認するのも、産業医の仕事だ。

「病気が原因の場合は、治療につなげることで解決に導くことはできますが、相談者が職場に不満を抱いている場合は、なるべく話を聞いて不満を吐き出してもらったうえで、具体的にどこに問題の根本があるのか掘り下げていきます。

課題が職場環境や上司のほうにあれば、人事や職場に働きかけます。もちろん、本人の課題と思われる部分は、本人を諭すこともあります。

また、性格特性やコミュニケーションが問題となっている場合は、治療の側面だけでなく、職場の人とうまく付き合うために、個別事例に即して『上司と本人との間でこんな工夫やルール決めをしてみては?』といった提案をします。相談に来る人だけでなく、会社・組織全体を見る視点が、産業医と病院の医師の大きな違いかもしれませんね」

Yさんが婦人科を受診すると、PMDDと診断され、ピルと漢方薬が処方された。

数カ月経つと、Bさんの目から見ても、Yさんの様子に落ち着きが見え始め、建設的な対話ができるようになった。

女性の上司のほうがかえって理解されにくい

では、女性上司の場合はどうなのだろうか。

「女性上司が同性部下に厳しいケースもありますね。月経のつらさは千差万別ですが、月経が軽い女性上司の中には、月経が重くて悩んでいる女性部下に対して、共感が示せないケースも少なくない印象です」

「月経を理由に弱音を吐くなんて!」とバリバリやってきた上の世代の女性はとくに、「月経なんて理由にならない!」という態度になりがちだ。

「女性上司の方に知ってほしいのは、人によって月経の重さは違うということです。PMS・PMDDだけでなく、月経痛が重い人、子宮内膜症などの持病を抱えている人もいます。とくに日本人女性は、痛みやつらさを我慢してしまう人がすごく多いです。痛みやつらさは、治療や薬、日頃のケアで改善・緩和できることは多いですし、大きな病気を早期発見できることもあります。もっと早く専門家に相談してほしいと思います」

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