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タイ発「BLドラマ」が大ブレイクする納得の事情 LGBTに寛容な社会の背景にあるものとは

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  • 大塚 智彦 フリーランス記者(Pan Asia News)
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そうした宗教、歴史に加えて、タイ国民の国民性も背景にはあると指摘されている。「生物学的な性」と相違する「自己認識する性」が存在する性同一性障害の場合、「自分に正直に生きること」を選択する際に、タイ社会はその障壁やハードルが決して高くないという現実がある。

タイでは一般的に相手への敬意を「ワイ(合掌)」で表現する。これは僧侶や年長者には軽い会釈も伴う礼儀で、このあいさつ「ワイ」がタイ社会の潤滑油になっているとも言われるように、多民族、多様な人々が暮らす社会をいかに仲良く、円滑に動かすかという知恵の所産でもある。それが性的少数者や社会的弱者にも寛容な社会を支えているのではないだろうか。

イスラム教はLGBTの存在を認めていない

こうしたタイ社会のありようは、同じ東南アジアのマレーシアやブルネイというイスラム教国(イスラム教が国教と規定されている国家)や、イスラム教国ではないもののイスラム教徒が国民の約88%と圧倒的多数を占めるインドネシアなどと大きく違うところだ。

イスラム教ではLGBTの存在を基本的に認めてはいない。一種の病気として政治経済社会文化のあらゆる分野で差別、虐待の対象になりうるのだ。

ブルネイでは2019年4月に同性愛や不倫は犯罪であるとしてむち打ち刑、禁固刑そして石打ちによる死刑の適用を決めた。ところが国際社会や人権団体から猛反対を受けて現在その適用は見合わされている。

インドネシアでは同性愛は法律違反ではないが、唯一イスラム法「シャリア」の適用が認められているスマトラ島北部のアチェ州では不倫、同性愛、未成年性交などはイスラム教の規範に反した摘発対象となり、公開のむち打ち刑がよくニュースに取り上げられている。

「他者、異教徒」に対してそれを排除するイスラム教と受容する仏教の違い、といってしまえばそれまでだが、そうした宗教の違いが同性愛を含めたLGBTへのその国、社会の許容度と深く関わっているともいえるだろう。

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【とはいえ存在する厳然たる差別】

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