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タイ発「BLドラマ」が大ブレイクする納得の事情 LGBTに寛容な社会の背景にあるものとは

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  • 大塚 智彦 フリーランス記者(Pan Asia News)
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このことからもわかるように、タイは性に比較的おおらかな国で、男女の2つの性別のほかに、なんと18種類の性があると言われている。ゲイやレズビアン、バイセクシャルのほかに、「男装した女性が好きなのがトム」「トムが好きな男っぽいトムがトムゲイキング」「トムが好きな女っぽいトムがトムゲイクィーン」などと細分化された性が存在するという。

タイの寛容性が垣間見られるシーンは、タイで人気のオーディション番組「タイランズ・ゴット・タレント」でもあった。アメリカやイギリスで一芸に秀でた人が審査員と観客の前で歌や芸を披露する同番組は、タイでも絶大な人気を得ている。この番組に出演し、その映像がユーチューブで770万回再生されている1人の歌手がいる。

胸までの長い黒髪に長身で面長の女性が見事な歌声で歌いだし、観客も審査員もうっとりとする中、途中からこの女性が地の声で歌いだすのだ。野太い男性の声に観客は立ち上がって拍手喝采で応え、審査員も驚きを隠さない。

彼女が堂々とステージ上で女性の姿と声で歌い、その後生まれ持った男性としての地声で歌う姿、そしてそれを温かく応援する様子は、タイ社会におけるLGBTと呼ばれる人々を受け入れる抱擁力、受容性を感じざるをえない。

お互いに敬意を払う仏教の教え

タイは国民の約95%が熱心な仏教徒である。仏教では「一切衆生悉有仏性」という教えから「生きとし生けるものすべてに仏になりうる可能性がある」として命を慈しみ、お互いに敬意を払うという仏教の教えが人々の感性に深く染みこんでいる。

さらに同じく仏教の教えである「過去や未来にかかわらず今を大切に生きる」「昨日のことは忘れました、明日のこと知りません。だから今、ここ、自分を一生懸命生きる」という思想なども性的少数者に優しい社会を育んできたといえるだろう。

東南アジア各国は欧州列強の植民地だった歴史的経緯がある。イギリスの植民地(シンガポール、ミャンマー、マレーシア)、フランス植民地(カンボジア、ベトナム、ラオス)、オランダ植民地(インドネシア)、スペイン植民地(フィリピン)である。

植民地時代にヨーロッパの「同性愛禁止」という思想と法律が持ち込まれ、それが長い植民地支配時代に徹底され、現在まで残滓が残る中、タイは唯一植民地支配を受けることなく独立を守り通した。そのことでタイは歴史的に欧米の価値観を共有することを強いられなかったという経緯がある。こうした歴史もLGBTに対する国民の間の寛容性の背景にあるといわれている。

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【同じ東南アジアでも寛容性に違い】

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