17歳娘を殺された父が15年後もブログを綴る訳 未解決事件が13年後に犯人逮捕、無期懲役確定

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それでも忠さんはブログをやめない。2015年5月30日からは1日も休まず更新しており、これからも続けていく意志を明確にしている。判決が出た翌日の日記に意図が書かれている。

闘いが終わっても、娘と逢えない辛く哀しい現実は続きますけど
娘と縁を持たれた皆さんには、楽しい想い出は忘れてないで頂きたいと願います。
記憶まで無くなりますと、本当の別れ?となってしまうと感じていますので。
それと一番重要なのは、娘に対する汚名を消す事です。
事件後に通勤列車内で「命を奪われてしまう悪い女性」と話される会話を聞きました。
世の中、自分勝手な想像で真面目な娘が悪女にされたままでは
あまりにも情けない話しで命を奪われた上に、これ以上の屈辱は有りません。
なので皆さん「突然、命を奪われた優しい女性」だという事に
必ず、考え方を変えて頂きますように強く願います。
一日でも早く、悪い噂や考え方を頭の中から消して下さい。
皆さん、よろしくよろしくお願いいたします。
(2020年3月19日、「次は汚名を消す事」より)

聡美さんの性格は、ブログを通して忠さんがしばしば言及している。国語より算数が好きで、県立の進学高校に推薦で入れるほど学業に真面目に取り組んでいた。年の離れた下の子の面倒をよく見ており、父の日には普通に父にプレゼントを渡す。悪い噂が流れるいわれはない。けれど、もう本人が否定することはできない。だから父が伝える。

ひとりでも多くの人に

いつまでブログを続けるのか。2020年8月、忠さんはこう語った。

「とくに目標はありません。継続期間ですが、これからも講演活動は行う考えでいますので、連絡方法としてブログのメールアドレス(npo-friends@mail.goo.ne.jp)を使用していますから、最低限、依頼がなくなるまで続けようとは考えています。ひとりでも多くの人に、娘に落ち度はなく、一方的に被害に遭ったということを認識していただきたいです」

2020年9月のタイトルとブログ説明文(PC版)。これからの趣旨が端的に示されている(画像:ブログ「SA・TO・MI ~娘への想い~」より)

未解決事件が解決しても、家族のなかで出来事は終わらない。ブログは過去を忘却の彼方に捨て置かない役割を果たすこともできる。ブログ開始から15年近く。忠さんの不断の歩みがそれを証明している。

古田 雄介 フリーランスライター

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ふるた ゆうすけ / Yusuke Furuta

1977年生まれ。元葬儀業のライターで、キャリアは15年。デジタル遺品や死後のインターネットコンテンツの行方などを追っている。著書に『故人サイト』(社会評論社)、『中の人』(KADOKAWA)など。

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