「半沢直樹」最大の立役者が大和田である理由 主人公を超える話題性を生み出す絶妙な仕掛け

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前述したセリフの大半が半沢に向けたものであることからもわかるように、大和田は今なお主人公を引き立てる最高の存在。大和田は常に半沢と超至近距離で正対して言葉をぶつけ合うことで、“宿敵”であることをあらためて印象づけるとともに、“勧善懲悪”の世界観を保つ最重要パーソンとなっています。

しかし、放送が進むにつれて、半沢が苦しげな表情を浮かべながらも大和田に協力を要請したり、大和田も拒絶しながらもけっきょく共闘に応じたりなど、2人の間に不思議な絆のようなものが見えはじめました。そんな濃密かつ複雑な関係性を見た視聴者は、どこかほほえましいものを感じ、笑いながら見るように変わりはじめています。

このような宿敵の関係性が変化していく様子はシリーズ作ならではの醍醐味であり、視聴者の反応を見た作り手たちは、「してやったり」の心境でしょう。

コロナ禍に揺れる現場のムードメーカー

作り手の“大和田暁活用法”に続く2つ目のポイントは、「大和田を演じる香川照之さん」。

放送前、香川さんは、「私の演じた大和田常務は、前作で半沢に屈して失脚したあと、原作には登場しておらず、実はあの土下座のその後が描かれておりません。『封印された大和田』をいかに解放し、いかに命を吹き込むか、持てる精魂を懸命に尽くしたいと思っています」と力強く語っていました。再び大和田を演じられるうれしさを感じるとともに、武者震いをするような心境が伝わってきます。

さらに、「とはいえ今回私たちは、前作のように初陣の手探りから物作りを始めていないのです。『半沢直樹』の世界観を既に十分に知っているところから撮影を始められるのです。つまり、いきなりパワー全開でリスタートできるのです」と語っていた通り、香川さんはベテランとは思えないほど、放送前からパワー全開。

まず制作発表の場では、「池井戸潤先生の原作は完璧なんですよ。『どこに大和田が入る余地があるんだ』と。池井戸先生は『ダメだ』と思ったらいつでも首切ってください」と、原作へのリスペクトを示したうえで笑いを誘って盛り上げました。

また、香川さんは撮影前に行うセリフ読み合わせのとき、舞台出演で不在だった猿之助さんの代役を行い、1人2役を演じたそうです。その猿之助さんは、「(撮影現場では)保護者のように付き添ってもらって、手取り足取り教えてもらいました」と香川さんに感謝。さらにその言葉を受けた香川さんは、「前回、僕は土下座を食らっているわけですから、ウチの従弟まで土下座を食らうわけにはいかない」とユーモアで返して笑わせました。

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