迷走する理研、エリート研究所の危機 「科学者の楽園」は何につまずいたのか

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”白い巨塔”のような世界

それ以前に、組織の肥大化に伴う弊害も指摘される。

当初は物理と化学の研究を中心に発展してきた理研だが、国が掲げた「ミレニアム・プロジェクト」で、高齢化に対応した研究の要請を受け、2000年前後から生命科学系のセンターが急増した。1998年にゲノム科学総合研究センター、2000年には今回の問題の震源地となった発生・再生科学総合研究センター(CDB)など、新しい施設を毎年設置。今や約8割を生命科学系の研究員が占めている。

現在、国内では8拠点・約360もの研究室を抱えるが、研究員の任期のルールが異なるなど、各研究センターで運用はバラバラ。中でも、「生命科学分野はまるで『白い巨塔』のような閉ざされた世界だ」(冒頭の元職員)。

2010年まで理研で免疫学を研究していた明石市立市民病院の金川修身・研修担当部長は、「化学出身の野依さんが、文化がまるで違う生命科学系のセンター長を管理するのは難しく、実際の業務は各センター長に丸投げしていたのではないか」と話す。

ミレニアム・プロジェクトを振り返ると、「国からカネが出たからセンターを作ったものの、研究内容はセンター長任せになっていた」。しかも、研究費には限りがあるため、センター長は研究テーマを考えて新たなカネを獲得しなければならない。その結果、金川氏が在籍した免疫・アレルギー科学総合研究センターでは、花粉症の研究が中途半端なまま終わったケースもあったという。理研に15年勤めたインペリアルカレッジ・ロンドンのトーマス・クヌッフェル教授も「国からの交付金を、理研内で何に基づいて各センターに配分しているのかを透明化する必要がある」と指摘する。

ただし、巨額の税金投入が全面的に支持されるのかという問題もある。ネットの普及で学界もグローバル化しており、他国の発見を日本で応用することもできる。「新たな研究開発法人制度創設に関する有識者懇談会」で委員を務めた、政策研究大学院大学の角南篤教授は、「たとえば、日本で日本人が再生医療をやらなくてもいいのではないかという議論がある」と言う。

いくら理研が世界的に有名でも、成果をきちんと示し、国民に存在意義を理解されなければ、税金を食い潰すだけの研究所とみられかねない。

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