北京ー上海間高速鉄道、上半期の旅客が6割減 中国でも「コロナ後」の人の移動はなお低水準

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北京と上海を結ぶ「ドル箱路線」の低迷は、中国全土の鉄道の縮図でもある(写真は京滬高速鉄道のウェブサイトより)

中国では「コロナ後」の経済再開が世界に先駆けて進んでいるが、今もなお先行きが見えない業界も少なくない。そのひとつが鉄道の旅客輸送だ。北京と上海を結ぶ高速鉄道の運営会社である京滬高速鉄道が8月27日に発表した2020年1~6月期決算は、新型コロナが鉄道旅客輸送に与えた打撃の深刻さを改めて印象づけた。

京滬旅客専用線は、中国全土の鉄道のなかで最も高い収益力を誇る「ドル箱路線」だ。にもかかわらず、京滬高速鉄道の1~6月期の売上高は100億4600万元(約1547億円)と前年同期比40%減少。純利益の落ち込みはさらに大きく、5億3000万元(約82億円)と同90%も減少した。

業績回復が遅れている最大の理由は、(省をまたいだ旅行や出張など)人の移動がまだまだ低水準であることだ。決算報告書によれば、京滬旅客専用線の本線だけを走る列車の1~6月期の旅客輸送人員は延べ959万人と、前年同期より61.7%減少。地方の鉄道局が運行して京滬旅客専用線に乗り入れる直通列車の営業運転距離も同21.3%減少した。その結果、運賃と線路使用料という2大収益源がともに大減収に見舞われた。

地方路線の買収に伴う負担増も重荷に

京滬高速鉄道の苦況は、全国の鉄道路線の縮図でもある。中国全土の鉄道を所管する国家鉄道局の発表によれば、2020年1~6月期の全国の鉄道旅客輸送人員は延べ8億1700万人と前年同期比53.9%減少した。

とはいえ、京滬高速鉄道の業績不振の要因はコロナが京滬旅客専用線に与えた打撃だけではない。同社は今年1月、河南省商丘から安徽省合肥を経て浙江省杭州に至る「商合杭高速鉄道」の運営会社である京福鉄路客運専線安徽(京福安徽)を買収した。決算報告書によれば、京福安徽は1~6月期に12億2900万元(約189億円)の純損失を計上している。

京福安徽の買収は、京滬高速鉄道の資本コストも増加させた。2020年6月末時点の長期借入金は759億7100万元(約1兆6700億円)と、1年前より17.39%増えている。決算報告書によれば、これは京福安徽の買収に伴う銀行借入によるものだ。

本記事は「財新」の提供記事です

今後の経営環境について京滬高速鉄道は、「旅客需要が短期間で完全回復するのは難しい」と予想している。その前提で同社は、1~9月期の累積純損益が前年同期比で大幅に膨らむ可能性があるとの厳しい見通しを示した。

(財新記者:白宇潔)
※原文の配信は8月27日

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