香港の航空大手のキャセイパシフィック航空は6月9日、香港政府が主導する総額390億香港ドル(約5460億円)の資本増強計画を発表した。新型コロナウイルスの流行で致命的な打撃を受けた経営を立て直すため、香港政府の支援を受け入れる。
新型コロナの世界的大流行は国境を越える人の移動をストップさせ、国際航空路線の運行便数は過去にない水準に激減した。アジア有数のハブ空港である香港国際空港は3月25日からすべての乗り継ぎサービスを停止。国内線を持たないキャセイは経営破綻の瀬戸際に立たされていた。
香港政府が既存の民間企業に資本注入するのは今回が初めて。香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は記者会見で、キャセイは香港の航空旅客輸送の57%、航空貨物輸送の41%を担っているとしたうえで、「仮に経営破綻すれば、その空白を埋められる航空会社は香港にはない。今回の危機は経営上のミスが招いたものではなく、政府の支援が必要だ」と強調した。
「資本増強策が成り立たなければ倒産」
キャセイが発表した計画によれば、同社は香港政府が設立する「アビエーション2020リミテッド」に対して195億香港ドル(約2730億円)相当の優先株と19億5000万香港ドル(約273億円)相当のワラントを発行する。さらに大株主のスワイヤ・パシフィックや中国国際航空を含む既存株主を対象に117億香港ドル(約1640億円)の株主割当増資も実施する。
香港政府が取得する優先株に議決権はないが、売却や譲渡は可能で、配当利回りは最初の3年間が3%、その後は5%から9%まで段階的に引き上げられる。さらに香港政府は78億香港ドル(約1090億円)のつなぎ融資も提供。金利は香港の銀行間取引金利に1.5%を上乗せしたものが適用される。
「率直に言って、この資本増強策が成り立たなければ倒産しただろう」。キャセイのパトリック・ヒーリー会長は、6月9日のオンラインでの記者会見でそう述べた。同社は「コロナ後」の事業モデルについて再評価したうえで、香港の航空需要を満たすために最適な事業規模や経営形態のあり方を9月末までに取締役会に提案するという。
(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は6月9日
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