アウシュヴィッツ日本人ガイドが語る戦争伝承 なぜ起きてしまったのかを考える必要がある
第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ占領下のポーランドにあったアウシュヴィッツ強制収容所では100万人を超えるユダヤ人が命を失った。そのアウシュヴィッツ博物館で唯一のアジア人としてガイドをつとめる中谷剛さんという日本人がいる。
25年以上にわたって他国で起きた虐殺の歴史を伝え続けてきた中谷さんに、リディラバジャーナル編集長の安部敏樹が、「戦争伝承のあり方」と「75年前のホロコーストから今、私たちが学ぶべきこと」を聞いていく。
言葉も話せない状態でポーランドに
安部:そもそも中谷さんは、なぜポーランドへ行こうと思ったのですか。
中谷:言葉も話せないし文化も知らない、何も持っていない人間が外国に来てやっていけるかどうか実験してみようと思ったんです。それができれば社会は捨てたもんじゃない、民主主義は成熟していると言えるだろう、と。一ヶ月でダメになるだろうと想像していたけど、もう30年になりました。
安部:社会が積み重ねてきた民主主義の土台の上で活動できている、という認識を持っていらっしゃるんですね。いまは新型コロナウイルス感染拡大によって観光客も少ないと思いますが、どのような影響がありますか。
中谷:3月から閉館していましたが、ガイドがフェイスシールドをつける、消毒を頻繁に行うといった対策をした上で、先月から再開しました。
来場者数は例年の4分の1から5分の1くらいですね。
日本人のお客さんは来ないので、私は自宅で翻訳など別の仕事をしています。コロナが引き起こす経済不況が世界にどう影響を及ぼすのか、それに対して私たちに何ができるのか、今後どんな風に戦争遺産からの学びを伝えていくべきか、思案しているところです。