アウシュヴィッツ日本人ガイドが語る戦争伝承 なぜ起きてしまったのかを考える必要がある

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安部:第二次世界大戦のことを当事者として語れる人が、この先10年くらいでいなくなるわけですよね。その後はどうやって戦争を伝承していけばいいのでしょうか。

中谷:次世代の役割は、「なぜそれが起きたのか」を考え語っていくことだと思います。当事者ではない分、客観的に見やすいんですね。

繰り返さないためにどうすればいいのか

当事者が語ってきたことを元に、事実を誇張して伝えるのではなく、「これを繰り返さないためにはどうしたらいいのか」という問いを深めていく。それが重要なのだと思います。

安部:リディラバジャーナルで取り組んでいる「社会問題の構造化」も同じです。当事者には自分の経験として社会問題を語ってもらうけど、それが起こってしまう構造を説明することまでは求めない。その分析は専門家や僕たちがやるべきことです。今後の戦争伝承においても、そこに重点が移っていくんでしょうね。

<中谷剛さん>
1966年兵庫県生まれ。1991年よりポーランドに居住し、1997年、ポーランド国立アウシュヴィッツ・ミュージアムの公認ガイドの資格を取得。現在、同ミュージアムの唯一の日本人ガイド。通訳・翻訳家。オシフィエンチム市に妻と息子二人と暮らす。著書『ホロコーストを次世代に伝える』(岩波ブックレット)。

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「リディラバジャーナル」編集部

「リディラバジャーナル」は社会問題の現場を訪れるスタディツアーを提供しているリディラバが2018年1月に立ち上げたウェブメディア。社会問題を見続けてきたリディラバの知見をもとに、問題の背景にある社会構造まで踏み込んだ、特集形式で記事を提供する有料メディアです。

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