日本人は自らの臆病体質の弱みを認識してない 政府、企業のリスク取らない姿勢が未来を蝕む
例えば、2010~2014年にかけて行われた世界価値観調査では、日本はさまざまな面で特異な傾向を示しており、国際的に極めてかけ離れた価値観を持っていることが印象づけられた。とりわけ目立ったのが、次のような質問に日本は「当てはまる」とした人がいずれもほぼ最下位だったことだ(一部を除いて60カ国が参加)。
●冒険し、リスクを冒すこと、刺激のある生活(最下位)
●裕福で、お金と高価な品物をたくさん持つこと(最下位)
●安全な環境に住むこと、危険なことはすべて避けること(最下位)
●社会の利益のために何かをするということ(58カ国調査で最下位)
●大いに成功すること、成し遂げたことを人に認められること(60カ国中59位)
こうした調査に基づいて、日本国民とりわけ20代の若者は、リスクを取らないと評価される報道が相次いだ。例えば、『ニューズウィーク日本版』は2015年12月1日配信の記事で、「世界一『チャレンジしない」日本の20代」という記事を掲載している。
とりわけ、注目されたのが「冒険し、リスクを冒すこと、刺激ある生活」について肯定した回答の比率が23.1%しかなかったことだ。42位だったアメリカの55.8%と比較しても、その比率は低い。日本人がリスクを取らない、もしくは取れない環境に置かれていると報道された。
当時は、冒険志向の若者の比率が高く、海外留学の比率が高い韓国や中国など、日本以外のアジア諸国とも比較されて「委縮する日本の若者」という見出しが躍った。その背景にあるのが「新卒一括採用」という日本特有の雇用制度であり、この枠からはみ出ると多大な経済的損失を生涯にわたって受けることになる特殊な事情があると、分析された。
ちなみに、こうした傾向は今でも変わることがない、といっていいだろう。
問題は若者ではなく企業や行政の問題
世界価値観調査の結果については、むろんさまざまな評価の仕方がある。日本の若者が単純に「チャレンジしない若者」という捉え方もあれば、「自意識が低く、自分自身をより正確に把握できている」という捉え方もある。自己肯定感が低く、自己評価が厳しい、といった捉え方だ。
とはいえ、こうしたリスクを取らないという傾向は、実は若者だけの問題ではない。日本企業が1990年代のバブル崩壊以後、経済成長を遂げることができず、現状維持に溜まるのがやっとという企業も多かった。
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