日本人は自らの臆病体質の弱みを認識してない 政府、企業のリスク取らない姿勢が未来を蝕む

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アメリカや中国は200社を超えており、イギリスやインド、ドイツ、韓国といった国も2桁を超えている。こういう点でも日本のビジネス界のリスク回避傾向が見て取れる。

ベンチャーキャピタル投資額の対GDP比率も、日本はわずか0.03%しかない(2017年基準、OECD調べ)。中国の0.791%、アメリカ0.4%、イスラエル0.378%に比べれば日本はわずか20分の1~10分の1にしか満たない。日本企業が、いかにリスクを取らないかを物語っているといっていいだろう。

古い体質が企業の成長の芽を潰している?

そもそも日本企業は、新しいことへのチャレンジをしない体質になってしまっている。その姿勢は経営者だけではなく、1人ひとりの社員にも当てはまることだ。ある外資系企業で海外にある本社から赴任してきた社員に質問されたことがある。

「なぜ日本人は、上司が任せると言っているのに、詳細に報告してコンセンサスを得てから行動を起こすのか……。そんなことをしていたのではビジネスチャンスを逃してしまうと指摘するのだが、どうしても自分1人で決断して行動に移すことが苦手なようだ。その理由はどこにあるのか……」

その質問の答えがあるとすれば、日本の雇用形態に問題があると考えられる。責任を取りたくない、自分1人で判断して失敗した場合、責任を取って会社を辞めるようなことになれば、海外と違って転職は不利となり、場合によってはその後の人生に大きなマイナスをもたらしてしまう可能性が高い。

いわゆる「終身雇用」や「新卒一括採用」の弊害なのだが、企業はこうした現実を織り込み済みで、現在の組織を作っていると思える節がある。

例えば、日本企業が新卒一括採用システムを採用し続けている理由は何か。内閣府の「国民生活白書平成18年版(企業の採用のあり方に関する調査)」によると企業は「新卒一括採用システムのメリット」について次のように回答している(940社、2006年、複数回答)。

●社員の年齢構成を維持できる… 58.9%
●他社の風習などに染まっていないフレッシュな人材を確保できる… 52.2%
●定期的に一定数の人材を確保できる… 40.5%
●面接や選考を短期間で効率的に行いうる… 18.7%
●能力の高い人材を確保できる… 11.7%

要するに、日本企業は能力の高い人材よりも、どこにも染まっていないウブな人材を採用している、ということだ。これでは国際競争に勝てるわけもない。

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