KPIを導入しても経営が上向かない「あるある」 「効果がない or 逆効果」を防ぐ使用上の注意

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安易なやり方でそのKPIを達成しようとする人間も出ます。例えば研究所で「特許の数」を研究員のKPIとして設定するのはよくあることですが、それを強調しすぎると、「会社にとってはそれほど役に立たない、取りやすい特許」を取ろうとする人間がこれまた一定比率は登場します。これは企業の競争力につながりませんし、優秀な研究者がそうした行動をとってしまうとしたら大きな損失です。

KPIは、組織が向かうべき方向性や戦略の重点を従業員に伝えるメッセージでもあるのですが、その理解が甘いと、メッセージが誤解・曲解され、従業員の行動を誤らせてしまうのです。

まだまだある失敗ケース

ここまでご紹介した以外にも、KPIの項目そのものはよくても、目標設定が不適切で従業員の不正を招くこともあります。

数年前には日本を代表する電機メーカーの組織的な不正が注目を浴びるといった事件も起こりました。達成が困難なストレッチ目標が与えられた結果、会計的な不正が起きてしまったのです。

本来であればこうした不正はすぐに発見されるべきなのですが、例えば循環取引を利用した架空売り上げの計上などは、プロの会計士でも容易に見破ることはできません。別のケースでは、強引に売り上げ目標を達成しようとした結果、判断能力の低下した高齢者に強引に売りつける、というケースもありました。

また、測定しにくいものをKPIにしたがゆえに経営や上司に対する不信を招くといったこともよくあります。例えば顧客との真の商談時間などは、なかなか正確に補足できないものです。これを自己申告で過大に報告してそれがまかり通るようであれば、まじめに報告している営業担当者はやる気を失うことでしょう。

自己啓発に使った時間や部下とのワンオンワンのミーティング時間なども同様です。こうした測定しにくい数字は、1つの情報源だけではなく、多面的に捉える工夫が必要なのですが、それが十分な組織は多くありません。

KPIが中途半端なまま経営することは、飛行機の操縦に例えると、本来計器などで測定されるべき数字が不十分なまま、勘や経験で操縦しているようなものです。経営環境が変わらなければ勘や経験がそのまま生きるかもしれませんが、残念ながら今はそんな時代ではありません。

今回紹介した典型的な落とし穴を避けつつ、KPIを用いて科学的なマネジメントを行うことが現代の経営者やマネジャーには求められているのです。ぜひ皆さんご自身を振り返り、職場で適切にKPIが設定・運用されているか確認してみましょう。

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