要注意!社員を「リモート監視」する会社の末路 会社が何で成り立っているのか考えてみよう

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企業は、物事を遂行させるために人を採用しているのだと思います。必ずしも、一定時間の労働や特定の行動をさせるためではないはずです。定常作業の自動化が増え、問題解決能力やクリティカルシンキングなどのソフトスキルの価値が大きく増している現在ではなおさらでしょう。

ところが、現在でもマイクロマネジメントは一般的に行われています。仕事が本当に嫌いになってしまう原因です。従業員は大人としての考えを持っており、大部分において、大人として扱われたいと考えています。ゆえに監視が必要な小さな子どものように扱われたいとは思っていません。

従業員への信頼度が低い会社で働く弊害

4. 監視はストレスや健康問題の原因

コンピューターやソフトウェアベースで監視を行っている場合、仕事やスケジュール上の判断は、最終的に機械に委ねられます。「アルゴリズム管理」とも呼ばれる方法です。結果として、従業員は仕事で仲間からアドバイスや支援を求める自由がないか、ないと感じます。

このような仕事の構造や業務管理の劣化に起因するストレスは、実際に短期的な体調不良や、長期的な健康状態の変化を招くおそれがあります。AT&Tの従業員700人以上を対象に行われた調査では、電子的に仕事をモニタリングされている従業員の方が、職場をストレスが多い環境と見なし、多くの心的緊張、不安、落ち込み、疲労、健康問題を報告していることが判明しました。

また、一部の現場実験や調査を分析した結果、信頼度の低い企業で働く従業員と比較して、信頼度の高い企業で働く従業員は、ストレスが74%低く、職場での活力が106%高く、病欠が13%少なく、バーンアウトが40%少ないことが分かりました。

自由という感覚を奪うことが、従業員の健康や活躍に非常に重大な影響を与えることに加え、厳しい監視は、上司に対する部下の信頼や部下に対する上司の信頼を損ねてしまいます。信頼の文化は、監視を増やすのではなく、減らすことにかかっています。

新型コロナウイルスのパンデミックによって、従業員に対し、いずれにせよ前から行うべきであった事を実施する機会が得られました。それは、担当業務の管理はこれまで以上に従業員に委ねること、業務の構造を改善すること、そして従業員の責任を拡大することです。それはつまり、従業員を感情のある大人として信頼して扱うことでもあるのです。

ジェフリー・フェッファー スタンフォード大学経営大学院教授

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Jeffrey Pfeffer

スタンフォード大学ビジネススクール教授(トーマス・D・ディー2世記念講座)。専門は組織行動学。1979年よりスタンフォード大学で教鞭をとるほか、ハーバード大学ビジネススクール、ロンドン・ビジネススクール、IESEなどで客員教授や講師を務めている。著書多数

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