ところが、信頼は外部的な成功指標以外の部分にも実は影響しています。信頼は、組織の潤滑剤のような役割を果たします。信頼が高いほど摩擦が減り、人々は協力して、より効果的に働きます。また、従業員は不審な動機を持つ人に重要な知見を漏らしたくないと考えるため、信頼は協力や情報共有への意欲にも影響します。
たとえば、リーダー育成などを手がけるトラスト・エッジ・リーダーシップ・インスティテュートの調査対象となった就業年齢にあるアメリカ人1202人のうち23%が、リーダーが信頼できれば、もっと多くのアイデアや解決策を提案すると回答しています。
従業員の監視は今に始まったことではない
2. 監視は信頼を損なう
従業員を厳しく監視する企業の行動は、従業員は監視しなければ仕事をしないという、会社の信頼のなさを示しています。ところが、電子的な手段による従業員の監視は、今に始まったことではありません。新型コロナウイルスやリモートワーク化が始まるよりもかなり以前から行われていたのです。ある調査によれば、14年前でさえ、企業の78%が従業員を監視しており、半数は電話をモニタリングしていました。
これは、会社側が、監視や指示によって業務が円滑に回ると信じているからです。社会心理学者ロバート・チャルディーニや私は、これを「監視信仰」効果と呼んでいます。実際、監督者は、監視下で行われた仕事の成果は、指導なしで行われた仕事よりも優れていると認識する傾向があります。
ところが実際には、監視によって、会社に対する従業員の信頼が損なわれます。社会心理学者ロイド・ストリックランドが60年以上前に実施した研究では、職場を模倣した環境で、被験者に2名の部下(実際には実験者が用意した部下役の人物)のうちランダムに選出した1名をより厳しく監視させました。
次に被験者に厳しく監視する部下を選択させたところ、被験者は1回目と同じ人物を信頼の度合いが低いと考え選択しました(その人をすでに監視したという以外に、同じ人物を選ぶ理由はありません)。
つねに上司が見張っていれば、従業員には自分が監視しなくても信頼に値すると証明する機会がないため、監視し続けると実際に信頼できる人物かどうかを試すことができないという矛盾があります。会社側がリスクを取り、従業員に作業を監視なしで任せるまで、その仕事ぶりは従業員自身の意欲や意識の結果ではなく、監視の結果と見なされることになります。
3. 企業は細かな行動ではなく、結果を評価するべき
業務の遂行に関する法律や適用される規制に準拠していれば、企業が従業員の就業状況を気にする必要はあるでしょうか。多くの研究が示すように、仕事に費やした時間は生産性に反比例していることが多いものです。学校の勉強や仕事の合間に休憩を取ることで、実際には集中力が上がります。
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