続いて、優秀賞の2作品を紹介しよう。
数年前まではSNSといえば「Facebook」の独り勝ち状態という時代があり、Facebookで採用ページを開設することがブームになっていたこともあった。ただ、今や若者世代においては「Facebook」にかつての勢いはなく、「Twitter」「Instagram」「TikTok」などさまざまな特徴のあるSNSが並行して利用されている。
就職ナビだけでなく、SNSを活用した採用活動が主流になりつつある今、世の中の動きに取り残されまいと、これらのSNSに不慣れな採用担当者が何とか応募者を集めようと、社内の若手社員を巻き込みながら、悪戦苦闘している様子をうまく表現した作品だ。
それぞれのSNSの特徴を「つぶやいて」、「撮って」、「踊って」、「いいねして」と、規定の文字数の中で簡潔に表現することに成功している。この作者が自社の採用活動で作成・活用しているSNSをぜひ見てみたいものだ。中でも最も見てみたいのが「TikTok」。
自宅ならではの珍事
優秀賞をもう1つ。
Web面接で実際にあったエピソードを簡潔に笑える句として詠んだ作品。
「学生が自宅の自室でウェブ面接に参加中、カメラに映る学生の背後のドアが開き、学生の母親が『あんた、なに独り言しゃべってるの? 頭おかしいのか?』と言いながらカメラにインしてきた。学生は必死に『面接中! 出てって!!』と怒っていた」と作者。
自宅生にとって、Web面接を成功させる秘訣は、いかに母親にWeb面接というものを理解してもらい、協力とまでいかなくともいいから、せめて邪魔だけはしないようにしてもらうことなのかもしれない。面接官である人事担当者にとっては微笑ましいエピソードも、面接を受けている最中の学生にとっては目の前が真っ暗になるほどの事件だったことだろう。
ところで、この学生の面接結果はどうだったのかが気になる。この学生の今後長きにわたる母子関係にも十分に配慮していただき、ぜひとも寛大な評価をしていただきたいものである。
ここからは、佳作に入選した作品をいくつか紹介していきたい。
これまで見てきたように、Web面接中の家族の乱入や映り込みを詠んだ句は他にもいくつかあったが、こちらの句で詠まれているケースはさらに強烈なエピソードとなっている。
Web面接の画面で、学生の隣にスーツ姿の母親が座っていたとのこと。画面に映り込まないように小声でサポートするというレベルではなく、堂々と画面に登場し、「自分の家ですけど、何か?」と当然のように話し、面接の質問で子どもが困ると代わりに自ら回答までしてしまう母親に、ただただ呆気にとられる作者の様子が目に浮かぶ。
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