「EV」注力の裏に見える自動車メーカーの本音 読み解くカギは2つ!「法規制」と「ESG投資」

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一方、アメリカではトランプ政権下で、連邦政府が燃費規制の一元管理への移行を打ち出し、事実上のZEV規制廃止を議論し始めた。CAFEについては、オバマ政権での目標値への大幅な緩和策も提示したが、今年11月の大統領選挙の行方は見通せない状況だ。

また、主要な自動車メーカーの本拠地である欧州では、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)が、世界で最も厳しいCO2規制を推奨し、欧州グリーンディール政策という大枠のもと、英国やフランスなどでは個別に電動化社会に対する厳しい達成目標を示す国も出てきた。

「ニッサンパビリオン」敷地内の、充電する「リーフ」をイメージした展示(筆者撮影)

「EVは規制ありき」とは、こうした世界各地での政治的な動きに対して、自動車メーカーが「従わざるをえない」という、自らが身動きしづらい状況を示した表現である。

そのため「まずは規制クリアに見合うだけ、EVやプラグインハイブリッド車などの電動車量産計画を実行するのは当然」という考えを持つ自動車メーカーが多い。その姿勢は、各方面と意見交換する中で、2020年夏時点でも変わっていないと感じる。ただし、最近は「規制ありき」以外の要因が目立つようになってきた。それは、「ESG投資」だ。 

企業経営としてのマストアイテム

日本の経済産業省によると、ESG投資とは「従来の財務情報だけでない環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資である」と説明している。

ESG投資という観点でのクルマの電動化は、自動車メーカーに限らずさまざまな産業で顕著になってきた。例えば、流通や物流業者、また自社で多くの業務車両を所有する大規模事業者の間でも議論が高まっている。

日本では東京電力が中核となり、2020年5月に「電動車活用推進コンソーシアム」が、電力大手全社やトヨタ、日産、ホンダなど自動車大手が参画して立ち上がった。東京電力EV推進室によると「ESG投資に加えて、豪雨災害など防災レジリエンス(強靭化)の面でも業務車両の電動化への要望が多い」と指摘する。

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