「EV」注力の裏に見える自動車メーカーの本音 読み解くカギは2つ!「法規制」と「ESG投資」

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日産が全国各地の地方自治体と災害対策連携を締結する、日本電動化アクション「ブルースイッチ」も、実務的には地域貢献ではあるが、経営サイドから見ればESG投資対策の一環だと言える。

また、そもそも近年のEVブームの基点である、フォルクスワーゲングループが2016年に公表した「TOGETHER - Strategy 2025」による大胆なEVシフトも、一連のディーゼル不正による経営悪化からのV字回復を狙った、同グループのESG投資対策である。

課題は「実需ありき」への転換

このように、EVは現状で「規制と投資」への配慮が下支えしている状況にある。自動車メーカーとしては、市場からの要望(実需)に基づいて、EV事業の出口戦略を描くべきなのだが、それが上手く機能していない印象がある。

「ポルシェNOW東京」に展示された「タイカン」(筆者撮影)

本来EVという発想は、ガソリン車の代替物ではないはずだ。通信によるコネクティビティ技術を連携し、社会全体としてエネルギーマネジメントを考慮した、「新しい生活様式ありき」の移動手段であるべきである。そのうえで、技術面で“EV三重苦”といわれてきた「高価格」「航続距離の短さ」「充電インフラ(設置数や充電時間)」に対する技術革新が進むべきだ。

ところが、実際の市場では、テスラが開拓したプレミアムEV市場を強く意識した、電池容量の大型化と超高速の急速充電ばかりが目立つようになってしまった。

一方、ホンダのようにエネルギーマネジメント全体論の中でEV商品化を論じても、社会全体でのコンセンサスとホンダの事業の方向性がどのように連携するのかは、いまだにはっきりと見えてこない。ホンダeではシティコミューター的に使うも、中大型EVではGMが開発したEVプラットフォームを採用するといった、EVのニ枚看板に対する投資家向けの説明も不十分だ。

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そして、業界最大手のトヨタは、環境事案の長期ビジョン「環境チャレンジ2050」の中で、2050年時点でEV普及率は世界市場全体の1割程度と見積もる。技術面では、来るべきときに備えて、全固体電池の研究を自社内で着実に進めている。

こうした市場実態の中で、自動車メーカー各社が「規制と投資」に配慮しつつ、EV市場での先行者利益を模索しながらさまざまなマーケティング戦略を仕掛けているのが現状だ。 これが“EVブームっぽさ”を感じる、現在の自動車業界の実情だと思っている。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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