「そのフィギュアのために、コーヒーの出がらしで地面を作ったりいろいろ工夫していたら、ジオラマっぽくなったんです。調子に乗って今度は車両も置いた少し大きいものを作ったら、自己流にしてはうまくできたんですよ。
今思い出すと恥ずかしいレベルですけど、当時は、思いどおりに作りたいものが作れるしこれは面白いぞ!と思って。研究所を卒業してから、グラフィックデザインの本業の合間に、ジオラマ作りをする生活が始まりました」
ストーリー性あふれる世界観
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実物を寸分たがわず縮小した「スケールモデル」と呼ばれる模型が王道の時代。模型だけでなく、その情景描写まで立体的に表現するジオラマは当時まだ一般的ではなかった。金子さんが興味を持ったのはなぜだったのだろうか?
「両親が映画好きで、子どもの頃から映画館によく連れていってもらって、その中でもゴジラをはじめとした国内外の特撮映画がお気に入りだったんです。ああいう世界をいつか自分でも作りたいなぁという思いが、ずっとあったのかもしれませんね」
金子さんの作品はその完成度の高さから、『月刊ホビージャパン』や『POPEYE』、プラモデルメーカーの老舗タミヤのカタログ誌上で続々と発表することに。本業の傍らとはいえ、いったん作品づくりを始めると、寝食を忘れるほど夢中になったという。
「自宅で作品づくりを始めると子どもたちに、『トイレに行きたいけど手が離せないから代わりに行ってきて』と言っていたほどで(笑)。でも実際に手を動かし始める前に、ああしよう、こうしよう、素材はあれを使おうと妄想している期間のほうがずっと長いですね」
「ひまわり」よりも早く、1973年に発表した「羊飼い」もミリタリー系のジオラマに動物を登場させたはじめての作品で、今も根強い人気を誇っている。
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「これは、イタリア南部でアメリカ兵士たちが羊の群れに道をふさがれている場面です。その羊飼いに英語で敵情を質問するも、彼は、『俺んちのワインはうまいから寄っていけよ!』とわからぬイタリア語でまくしたてられ、困る米兵たちをイメージして作りました。こういう牧歌的なミリタリー模型はなかったので、当時は日本だけでなく海外でも話題になりましたね」
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