「セーラームーンの街並み」に隠された深い解釈 「スモールワールズTOKYO」で表現される世界

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TVチャンピオンのプロモデラー選手権で優勝した作品「学校/思い出」は、祖父をイメージした老教師が主人公。廃校を訪れて教え子たちのことを思い出している様子が、手にとるように伝わってくる。

「学校/思い出」© Kaneko Tatsuya
「学校/思い出」© Kaneko Tatsuya

 

ほかの代表作には、青い空の下の海洋調査船と、蒼い海に眠る旧ドイツ軍潜水艦の、生と死を思わせるコントラストが印象的な「カリプソ号」。飛行機に驚き飛び立つフラミンゴの群れの躍動感が伝わってくる「フラミンゴ」など。どの作品にもドラマがあって、ずっと眺めていても見飽きない。

「カリプソ号」© Kaneko Tatsuya
「フラミンゴ」© Kaneko Tatsuya

「子どもの頃から本を読むのが好きで、毎月1冊好きな本を親に買ってもらっていたんです。黒澤明監督の映画もリアルタイムで観ていました。黒澤明監督は、脚本がよくなければ、いい映画はできないと言っていた。

その言葉には僕も同感で、ジオラマで何を表現したいのか? 何を伝えたいのか? コンセプトが軸としてあって、それを形にする方法として物語や技術を使う作品づくりをしてきました。だから構想に何年もかかった作品がたくさんあります。アイデアをメモしている手帳も数冊ほどあります」

日頃の悩みや心配ごとを忘れて別世界に没入できる

金子さんは、ジオラマ模型のコンテストの審査員も務めている。単に技術をひけらかしているだけの作品と、たとえ子どもが作ったもので技術が伴わなくてもコンセプトがしっかりと伝わってくる作品は、「すぐに見分けがつきます」と金子さん。

「経験を積めば誰でもある程度の技術力は身に付きます、技術力があれば作品の説得力は増すでしょう。でも、なぜその作品を作ったのか?という考え方や価値観こそ、その人がその人である証しで、アイデンティティーだと思うので。ですから、いろんなジオラマの展示会を見に行くと、作った人の心理状態までなんとなくわかります。精神医学の世界に箱庭療法ってあるでしょう? あれもジオラマですからね」

なるほど。するとここ数年のミニチュアブームは、無意識のうちに自発的に箱庭療法をしている人が増えているという見方もできるのではないか。日頃の悩みや不安や心配ごとを忘れて別世界に没入できる、ストレスフルな時代のニーズに合った趣味なのかもしれない。

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