「セーラームーンの街並み」に隠された深い解釈 「スモールワールズTOKYO」で表現される世界

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(画像提供:スモールワールズTOKYO)

道路は自動運転の車やバスが行き交い、自転車も人がペダルをこいで走っている。だんだん夕暮れになると、街の明かりも灯り始めた。3Dスキャンした自分のフィギュアを、この街に住まわせる住民権を買うこともできるというから驚きだ。

海外でも大人気、「情景模型」驚きのリアリティ

「SNSを見ていてもわかるように、今世界中でジオラマがはやっているように感じます。僕のFBでつながっている5000人中、半分以上は海外のファンの方です。現実社会とはまったく違う世界を楽しみたい人が増えているんでしょうね」

見る者を惹きつける趣向を凝らした世界感へのこだわりは、金子さん自身のこれまでの作品にも表れている。例えば、1994年発表の「ひまわり」。

これは、お花畑にドライフラワーを使うのが当たり前だった他の作品を見て、「誰もやっていないなら自分がひまわり畑をすべて手作りする」と一念発起して作った作品だ。

ドイツ軍の戦車が、侵攻したウクライナの大地に咲き乱れるひまわり畑を踏み荒らしている情景描写のリアリティーで、業界関係者やファンをあっと言わせた。

「ひまわり」© Kaneko Tatsuya

「ひまわり畑を手作りすると決めてから、北海道のひまわり畑を見に行きました。実物を隅々まで観察したり、写真を撮ったり、図鑑を調べたりして、資料も集められるだけ集めて。いくら手作りしてもスカスカになるのは嫌だったので、レイアウト上、密度感を出すために何本必要か計算したら350本だとわかったんです。そこで、予備も含めて370本分のひまわりの花びら、種の部分、葉っぱ、茎の図面を紙にプリントして、カッターですべて切り出して組み立てていきました」

なんという細かさ! 聞いているだけで気が遠くなりそうな作業だ。「10日ほど、ほぼ徹夜状態で作品を完成させた後、生まれてはじめて腱鞘炎になりました」というのもうなずける。

子どもの頃、プラモデルが好きだった金子さんが、大人になって本格的にジオラマを作り始めたのは20歳を過ぎた頃。桑沢デザイン研究所の学生時代、フランスに仕事で在住していた先輩に「遊びに来い」と誘われて、バイトで貯めたお金で渡仏。半年程パリにいたときに、1週間ほど滞在したロンドンの模型屋さんで鉛の兵隊フィギュアを買ったのが始まりだった。

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